コラム
外国人介護人材4つの在留資格を比較~選ぶポイント・受け入れの流れ~|採用のメリットや課題、現状を解説
その他
外国人介護人材の受け入れを検討している企業担当者にとって、「どのような在留資格の外国人が自企業に合っているのかわからない」という方が少なくありません。
この記事では、外国人の受け入れの現状や4つの在留資格の比較と選び方を解説します。さらに、外国人介護士などを採用した際の課題や対策、成功事例もあわせて紹介します。
目次
外国人介護士受け入れ(雇用)の現状
介護業界は、少子高齢化にともなう人手不足と介護職員の需要増加が問題となっています。介護業務の質を保つために外国人介護士を受け入れる事業所が増えています。
公益社団法人国際厚生事業団と出入国在留管理庁の報告によると、各在留資格の受入実績は以下の表のとおりです。
在留資格 | 受入実績 |
在留資格「介護」 | 10,468人 ※2024年6月末時点 |
EPA介護福祉・候補者 | 3,257人(資格取得者635人)※2023年1月1日時点 |
技能実習 | 15,909人 ※2023年末時点 |
特定技能 | 36,719人 ※2024年6月末時点 |
2021年3月時点の特定技能の在留者数は1,705人だったため、わずか3年余りで約20倍以上増えたことになります。これは外国人介護人材の需要増加と職場の働きやすさも影響しており、今後ますます増えていくことが見込まれます。
(参照元:厚生労働省「介護分野における外国人受入実績」出入国在留管理庁「在留外国人統計(旧登録外国人統計)統計表」「職種・作業別 在留資格「技能実習」に係る在留者数」「特定技能在留外国人数の公表等」)
【比較と選び方のポイント】外国人介護人材の4つの在留資格
外国人介護人材の受け入れができる制度は、以下の4種類です。
- 在留資格「介護」
- 特定活動(EPA介護福祉士)
- 技能実習
- 特定技能1号
各在留資格を比較しやすいように以下の表にまとめました。
(ここに各在留資格を比較した表を作成)
ここでは、外国人介護人材4つの在留資格の特徴、選び方のポイントを解説します。それぞれの在留資格の特徴を理解して、施設が直面している課題を解消できる人材を採用することが重要です。
①在留資格「介護」
在留資格「介護」は、国家資格である介護福祉士の試験に合格する必要があります。日本語能力や介護知識や技術が一定水準以上あるため、幅広い業務を担当することができ、即戦力として期待できる人材です。在留期間制限もないため、長い間働ける介護職員を希望する施設に合っている人材です。しかし、取得条件のハードルが高いため在留資格「介護」を保持している外国人が少なく、人材不足で採用が難しいのが現状です。
- 在留資格「介護」になる方法は、以下の3つです。
留学ビザで入国し介護福祉士養成施設で2年間就学後、介護福祉士を取得して在留資格「介護に」移行 - EPAなど他の資格で入国し、EPA候補生として日本で実務経験と研修を受け介護福祉士を取得して在留資格「介護」に切り替え
- 介護福祉士取得者と契約を締結し、在留資格「介護」ピザを発行
在留資格「介護」保持者は家族の帯同が認められている
在留資格「介護」保持者は、「家族滞在」の在留資格が認められる妻や子供の帯同が可能です。そのため、落ち着いて長期にわたり働くことができます。しかし、親や親戚の帯同は認められていないことに注意してください。
②特定活動(EPA介護福祉士)
特定活動(EPA介護福祉士)は、介護分野において日本とEPA(経済連携協定)を集結しているフィリピン・ベトナム・インドネシアから人材を受け入れて、介護施設で4年間介護福祉士取得を目指し就労と研修を受ける制度です。EPA介護福祉士候補者は、日本への入国前に母国で看護学校や大学を卒業し、日本語研修を受けなければいけません。そのため、介護知識や技術が一定レベル以上の人材を採用したい施設に向いている人材です。
入国4年目には介護福祉士の国家試験受験が必須
EPAは、日本で働きながら勉強し、入国4年目には介護福祉士の国家試験受験が必須です。そのため、受け入れ施設は、介護福祉士試験合格に向け適切なサポートをする必要があります。介護福祉士を取得できれば、永続的に日本で働くことができますが、介護福祉士試験に合格できなかった場合は、帰国しなければいけません。
技能実習
技能実習は、発展途上国への技能移転による国際貢献を目的とした制度です。技能実習生は入国後、日本語と介護の講習を受けた後、介護事業所に配属されます。入国してから1年後と3年後に技能検定試験に合格すると、最長5年間の滞在が認められます。人材も多く受け入れがしやすい制度ですが、細かい就労要件があり、未経験者に介護知識や技能を教えて人材育成をしなければならないため、介護現場で働けるようになるまでに時間がかかるケースが多いようです。
特定技能へ移行が可能
技能実習2号もしくは技能実習3号は2つの移行条件を満たせば、特定技能を取得するために必要な「介護に関する知識・技能」と「日本語能力」の試験を受けずに移行可能です。
技能実習2号から特定技能への移行条件は、以下の2項目です。
- 技能実習2号を良好に修了していること
- 技能実習の職種・作業が特定技能1号の業務に関連性が認められること
①の「技能実習2号を良好に修了している」とは以下のことを指します。
技能実習を2年10ヶ月以上修了
技能検定3級もしくは同レベルの技能実習評価試験を合格もしくは技能実習に関する評価調書で実習生として業務態度や出金状況が良好であることが確認可能
②の「技能実習の職種・作業が特定技能1号の業務に関連性が認められること」とは、介護職種の技能実習を受けた外国人は、特定技能「介護」にしか移行できないということです。
技能実習3号から特定技能への移行条件は、上記①の代わりに「実習計画を満了」と②を満たす必要があります。実習計画とは、技能実習生を受け入れる企業が国に提出している実習についての計画です。
技能実習1号から特定技能への移行はできません。
技能実習から特定技能に移行できた場合は、最長10年間日本で働くことができます。
特定技能1号
特定技能は、人手不足対策として2019年に導入された制度です。特定技能には1号と2号がありますが、「介護」は1号だけしかありません。
一定以上の介護知識と技能を持っているか評価する「介護技能評価試験」と日本語能力を確認する「国際交流基金日本語基礎テスト」もしくは「日本語能力試験N4以上」のどちらか、さらに介護現場で必要となる日本語能力を評価する「介護日本語評価試験」に合格するなど要件を満たすと取得できます。
特定技能1号を取得すると、最長で5年間介護事業所で働けます。業務内容は、日常生活支援や食事・排斥・入浴の介助、リハビリテーションの補助など身体介護とそれに関連した支援業務です。まだ訪問系サービスは認められていませんが、2024年6月の有識者検討会で、25年度を目標に訪問系サービスを解禁する方針が決定されています。
一人夜勤もOK! 即戦力となる人材を採用したい事業所向け
特定技能1号取得者は、幅広い業務に対応できるため即戦力となる人材を採用したい事業所に向いています。また、事業所に配属当日から人員配置でき、最長5年間受け入れ可能です。
特定技能1号受け入れの流れ
特定技能1号の受け入れは、直接外国人をリクルートするか、もしくは職業紹介機関を利用するかです。
特定技能1号取得者を受け入れる流れは、日本に住んでいるかどうかで異なります。
【日本在住者の場合の流れ】
- 2つの日本語試験と介護技能評価試験に合格するもしくは技能実習2号を良好に
- 修了雇用契約締結
- 支援計画書策定
- 在留資格変更の申請
- 就労
在留資格変更の申請は、最寄りの地方出入国在留管理局もしくは支局、出張所でおこないます。
【海外在住者の場合の流れ】
- 2つの日本語試験と介護技能評価試験に合格
- 雇用契約締結
- 支援計画策定
- 在留資格認定証明書の交付申請
- 在留資格認定証明書送付
- 訪日
- 就労
(参照元:出入国在留管理庁「特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領」)
在留資格認定証明書の交付申請は、一般的に受け入れ事業所が代理で申請して、本人に送付します。
本人の手元に届くまで申請から1〜3ヶ月かかるため、日本在住者は約3ヶ月、海外在住者は約5ヶ月かかります。
外国人介護士を採用するメリット
ここでは、外国人介護士を採用するメリットについて説明します。
人手不足の解消(若い労働力の獲得)
外国人介護士の採用の一番のメリットは、人手不足の解消です。就業直後は、生活や仕事面でサポートする必要がありますが、慣れてくれば日本人職員と同じように介護業務をおこなえるようになります。ぎりぎりの人員で運営している場合は、既存職員の負担が軽減されるため、労働環境の改善につながります。
また、外国人介護士は、若く体力があり、意欲が高い人も多いため、既存職員にも良い影響を及ぼすはずです。
地方でも介護士をを獲得できる
地方は人口が少なく、求人広告を出しても応募が集まりにくく、介護人材の確保が難しい傾向があります。しかし、外国人介護士は、希望の条件を満たす施設であれば、場所を問わず勤務してくれる人が多いため、地方でも人材の確保がしやすくなるでしょう。
外国人介護士の採用の課題と対策
外国人介護士の採用を検討しているものの、さまざまな課題があり躊躇している事業所が少なくありません。ここでは、外国人介護士を採用するにあたっての課題と対策を紹介します。
在留期限の問題
在留資格「介護」以外は、在留期限が設定されているため、長期間勤務ができません。しかし、別の資格に移行できれば在留期間が更新され、長期間勤務してもらうことも可能となります。また、在留期限内に介護福祉士を取得すれば、在留資格「介護」に移行でき、永続的に勤務してもらうこともできます。
費用の問題
外国人介護士を採用すると、住居の確保や生活用品の支給、日本語教育費、管理団体への依頼料などが必要となるため、日本人介護士を採用するよりも費用がかかります。
ですが、国や地方公共団体、公益財団法人が実施している補助金や助成金を利用すると、費用を抑えて外国人介護士を採用できるようになります。具体例として、国が実施している「人材開発支援助成金」や公益財団法人東京都福祉保健財団が実施している「特定技能制度に基づく外国人介護従事者の受け入れ支援事業」などがあります。補助金や助成金ごとに留学生や特定技能1号など対象者が決まっていますが、条件を満たせば日本語学習費や介護の専門知識の学習費などに対して補助金を受けることができます。
(参照元:厚生労働省「人材開発支援助成金」公益財団法人東京都福祉保健財団「特定技能制度に基づく外国人介護従事者の受け入れ支援事業」)
定着性・離職率の問題
介護業界は、労働環境や待遇の悪さから離職率が高く、他の業種に比べると定着率が低い傾向があります。せっかく育成しても離職率が高いと採用しにくくなってしまいます。離職率を下げるには、就労条件の満足度をあげることがポイントです。就労条件の満足度が高いほど、長期間同じ職場に定着する傾向があります。また、介護職に魅力ややりがいを感じ、他業種へ転職する可能性も低くなります。
以下を参考に、就労条件の満足度向上に役立ててみてください。
労働に見合った給料を支払う
外国人介護士に必要以上に高額な給料を支払うということではないですが、労働に見合った給料は支払わなければいけません。まして最近は、円安傾向のため、外国人介護士にとって以前よりも日本での労働が魅力的ではなくなっています。また、日本人介護士と同じ業務をしているのならば、同等の給料を支払うようにしましょう。
休暇を取得しやすい体制を整える
人手不足のために休暇が取りにくい環境が長期間続けば、外国人介護士に限らず離職率は高くなります。誰でも休暇を取りやすいような体制を整えましょう。
適切な労働時間
人手不足だからといって労働基準法に反する労働をさせてはいけません。また、介護業務が忙し過ぎて、休憩時間がとれないことも少なくありません。すべての介護職員が十分な休憩時間が取れるよう、労働環境を整えることが大切です。
明確な評価基準
自分で頑張って働いていると思っていても、誰からも評価されないのではやる気がなくなります。評価基準を明確にして、目標を達成できるようにやる気を持たせることが離職率低下につながります。
日本人との意思疎通やコミュニケーションの問題
日本語の勉強をしてきた外国人介護士も、日本語能力はそれほど高いわけではないため、意思疎通が取れず介護業務に支障をきたしてしまうこともあります。
外国人介護士と上手にコミュニケーションをとるには、まず外国人介護士の日本語能力を知りましょう。相手が理解できるスピードで簡単な言葉を使って話すように心掛けることが大切です。
困っていることがないか気を配ってあげることで、外国人介護士の定着率をあげることにもつながります。
利用者の中には、外国人に介護されることに抵抗感を持っている方もいます。さらに外国人介護士は日本語能力が高くない場合もあるため、利用者と適切なコミュニケーションが取れないことも、利用者の抵抗感を高める理由となります。
その場合は、利用者に外国人介護士が働くことを人柄も含めて丁寧に説明する必要があります。また、外国人介護士を腫れ物のように扱うのではなく、日本人介護士と対等に扱うことも重要です。
@カイゴが外国人介護士を受け入れた施設紹介
ここでは、外国人介護士を受け入れた施設を紹介します。
「つばきグループホーム」では、言葉の壁や文化の違いに対する不安がありましたが、人手不足解消と介護職員の若返りのために、ミャンマーからの実習生を受け入れました。
ミャンマーの実習生は、最初日本語能力が低くコミュニケーションが取りにくく、業務に支障をきたすこともありました。熱心に日本語の勉強をしてくれたため、徐々に業務もスムーズにおこなえるようになりました。
採用から1年経つ頃には、利用者ともスムーズにコミュニケーションが取れ親切に対応してくれるため、評判も良く施設にとって欠かせない存在になりました。
@カイゴでは、外国人介護士が安心して働ける環境が整い、毎年新しい外国人実習生を採用しています。ニーズに基づいた質の高い最適な人材の提案と確保を行いますので、@カイゴまでお気軽にお問い合わせください。
福祉介護業界以外での成功事例
日本では、介護業界以外でも外国人労働者の受け入れが増えています。ここでは、福祉業界以外で外国人の受け入れが成功した事例を紹介します。
観光業界
観光業界では、外国人の職員の受け入れは、人手不足を解消するだけでなくサービスの向上にも寄与しています。
ある観光地のホテルでは、人手不足解消のために積極的に外国人の受け入れをおこなうことを決めました。外国人観光客の母国語でスムーズなコミュニケーションを取ることで観光客の満足度が向上し、リピーターや売り上げ増加につながっています。
情報通信業
情報通信業界では、外国人エンジニアを採用し、社内では英語が使用されている企業があります。日本人にはない外国人の視点を取り入れ、サービスの向上や企業の成長に寄与しています。グローバル市場での成長を目指している企業にとって、外国人労働者の存在は大きな強みとなっています。
まとめ
4つの在留資格の特徴や選び方、外国人介護士を採用したときの課題と対策などを紹介しました。
4つの在留資格はそれぞれ取得条件や在留期限などが異なるため、自社のニーズに合った制度を利用すると人手不足の解消につながります。しかし、外国人の採用には課題がともなうため、外国人介護士を受け入れる環境作りが大切です。ここで紹介した対策を参考にして、上手に外国人を受け入れて人手不足を解消してください。