コラム

農業分野の外国人受け入れ|特定技能業務内容・試験・技能実習との違いを解説

特定技能

2025/3/12
2025/3/12

日本の農業現場は、高齢化が進む一方で、担い手の確保が難しく、多くの農家が労働力の確保に苦慮しています。特に、収穫期や繁忙期には一時的な労働需要が急増するため、安定した人材の確保が大きな課題です。

現在、農業分野で働く外国人には「特定技能」と「技能実習」というふたつの制度を用いて従事しています。本記事では、特定技能における業務内容や試験制度、技能実習との違い、外国人労働者の実態について詳しく解説します。農業分野での外国人雇用を検討する企業や関係者にとって役立つ情報を提供してます。

特定技能の農業分野とは?

特定技能の農業分野とは、人手不足が深刻な日本の農業現場で即戦力となる外国人を受け入れるための制度です。対象となるのは「特定技能1号」「特定技能2号」に分類される外国人で、一定の技能と日本語能力を有していることが求められます。特定技能1号の資格を得るには、農業技能測定試験と国際交流基金日本語基礎テスト又は、日本語能力試験(N4以上)の両方に合格するのが条件です。

在留期間は、1年、6ヶ月又は4ヶ月毎の更新で、通算5年間まで認められています。受け入れ企業や登録支援機関は、外国人が日本で円滑に働き生活できるように住居確保の支援や生活指導などのサポートをおこなわなければなりません。

特定技能は、技能実習とは異なり、研修ではなく即戦力の労働力を確保することを目的とした制度です。農業分野での外国人雇用を検討する企業にとって、長期的な人材確保の手段として活用が期待されています。

特定技能「農業」で対応可能な業務

特定技能「農業」では、耕種農業と畜産農業の2つの分野に分類され、それぞれの業務に対応する形で外国人の受け入れが可能です。
それでは、特定技能の耕種農業と畜産農業についてみていきましょう。

耕種農業

耕種農業では、野菜や果樹、穀物の栽培管理が主な業務です。具体的な作業は、以下のとおりです。

  1. 種まき・苗の植え付け: 作物の生育に適したタイミングで種をまき、苗を植える
  2. 生育管理・施肥: 作物の成長を促すための水やり、間引き、肥料の散布
  3. 病害虫防除: 作物の健康を守るために適切な農薬散布や害虫対策を実施
  4. 収穫・選別・梱包・出荷作業: 収穫した作物を品質ごとに選別し、市場や消費者へ届けるための準備
  5. 農業機械の操作: トラクターや田植え機、収穫機などを用いた効率的な作業
  6. 温室・ハウス栽培の管理: 温度・湿度調整を行いながら安定した農作物の生産

このように、前段階から収穫後まで細かな作業があり、それぞれの作業で外国人労働者が従事しています。
さらに、農業は季節ごとに作業内容が変わるため、季節ごとの仕事内容も覚えておかなければなりません。季節ごとの主なスケジュールは、以下のとおりです。

春:種まき・苗植え
夏:病害虫対策と生育管理
秋:収穫と出荷作業
冬:土壌改良や設備メンテナンス

季節に応じての作業が欠かせないため、特定技能「農業」での外国人労働者は無二の存在といえるでしょう。

近年、ICT技術の発展により、スマート農業の導入が進んでいます。センサー技術や自動灌漑システム、ドローンを活用した監視など、効率化が求められるなか、特定技能外国人労働者も新たな技術を習得しながら農業に従事することが期待されています。

畜産農業

畜産農業では、肉牛、酪農、養豚、養鶏といった家畜の飼育管理が主な業務です。具体的な作業は、以下のとおりです。

  1. 餌やり・水の管理: 家畜の健康を維持するために適切な餌や水を与える
  2. 健康チェック・繁殖補助: 家畜の体調を観察し、必要に応じて獣医と連携
  3. 衛生管理・清掃: 畜舎の衛生状態を保ち、感染症の予防を徹底
  4. 家畜の移動・出荷作業: 出荷のための家畜の移動や輸送準備
  5. 環境管理: 畜舎の温度・湿度調整や換気、適切なスペースの確保

畜産農業も耕種農業同様、飼育だけでなく細かな作業が多く、それぞれの作業で外国人労働者が従事しています。

また、畜産農業では家畜ごとの管理するポイントが違うため、専門的な知識が必要です。家畜ごとの主な管理方法は、以下のとおりです。

肉牛:放牧型と舎飼い型の違い、飼料の工夫
酪農:自動搾乳機の仕組みや乳質管理
養豚:成長段階ごとの餌の配合と健康管理
養鶏:採卵鶏とブロイラーの違い、それぞれの飼育方法

このように、畜産農業では家畜ごとに異なる生態や特徴を考慮しながら、適切な飼育方法を実践しています。

畜産分野でも技術革新が進んでおり、ICTを活用した家畜の健康管理システムや自動搾乳機を導入するところも増えています。外国人労働者も最新技術を活用しながら業務への従事が求められます。

外国人労働者の役割と受け入れの意義

特定技能制度によって、外国人労働者は即戦力としての役割を果たし、日本の農業分野で活躍しています。日本の農業は高齢化が進み、若い労働力の確保が急務です。そのため、外国人労働者の受け入れにより、さまざまな可能性を広げてくれます。

人手不足の解消: 特に繁忙期の作業負担を軽減
新たな技術の学習と活用: 外国人労働者がICT農業技術を学び、持続可能な農業経営を支える
グローバルな視点の導入: 多様な文化背景を持つ労働者が加わることで、農業の新たな発展の可能性が広がる

特定技能1号として一定の知識や経験を持ち、即戦力として活躍する外国人労働者は、日本の農業にとって重要な存在となっているのです。

注意するポイント

外国人を耕種農業や畜産農業に従事させる際、それぞれの業務内容や労働環境に応じた配慮をしなけれなばりません。

耕種農業は、屋外作業が多く、夏場の猛暑や冬場の寒さの影響を受けやすいです。適切な休憩時間の確保や熱中症、低体温症の予防対策を忘れないようにしましょう。特に、出身国によって気候の違いがあるため、日本の四季に慣れるまでの配慮が求められます。

また、トラクターやコンバインなどの農業機械を使用する場合、操作方法や安全管理の指導が必須です。農業機械の事故は重傷につながるケースが多いため、使用前にしっかりとした研修をおこない、安全ルールを徹底しましょう。

耕種農業では、作物の種類や栽培方法によって作業手順が異なるため、外国人労働者に対して適切な教育が必要です。日本の農業では細かい管理作業が求められることが多く、定期的な研修やマニュアル整備を徹底することで業務の定着を図ります。

畜産農業は、家畜の健康管理が重要です。日本の畜産業は衛生基準が厳しく、家畜への接触前後の消毒や病気の早期発見が求められます。外国人労働者にも衛生管理のルールを理解してもらい、遵守させることが不可欠です。

また、畜産農業は肉体労働が多く、牛や豚の飼育では重い餌袋を運ぶ作業や力仕事が欠かせません。また、早朝や深夜の作業が発生するケースもあるため、適切な勤務スケジュールを組み無理のない労働環境を整えましょう。

家畜に対する接し方は、国や文化によって考え方が異なることがあります。そのため、日本の畜産業における基本的な考え方や動物に対する扱い方、接触時の注意点をしっかり伝えることが必要です。また、ストレスを与えない適切な扱いを指導し、動物福祉の観点も考慮しなければなりません。

特定技能と技能実習生の違い


特定技能と混同されるものに技能実習生があります。これらの目的や制度の仕組みが大きく異なります。

農林水産省のホームページによると、技能実習制度とは、日本で開発され培われた技能、技術等の開発途上国等への移転を図り、その開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的とした制度です。法務省と厚生労働省が所管しています。外国人実習生は、日本で学んだ技能を母国へ持ち帰ることが目的の制度で「実習」という位置づけのため、労働力の確保を目的とするものではなく、企業は計画に基づいて段階的に指導・育成をおこなわなければなりません。

一方、特定技能は、日本国内の人手不足を補うために設けられた制度であり、外国人を即戦力として受け入れることを目的としています。特定技能の外国人は労働者としての権利が保障され、日本人と同等以上の賃金が支払われることが義務付けられています。さらに、特定技能1号では最長5年間の在留が可能であり、一定の経験や試験をクリアすれば特定技能2号へ移行し、在留期間の上限なく働くこともできます。

また、在留期間や転職の可否にも違いがあります。技能実習生は原則として決められた企業・職種でのみ働くことができ、転職は基本的に認められていません。一方、特定技能の外国人は、同じ分野内であれば転職が可能であり、より良い労働条件の職場へ移ることもできます。

このように、特定技能と技能実習生は目的や働き方に明確な違いがあるため、企業が外国人を受け入れる際には、それぞれの制度を正しく理解し、自社の状況に適した選択をする必要があります。

特定技能1号農業の取得要件

特定技能1号農業を取得するためには、一定の技能や日本語能力を証明し、適切な雇用契約を結びます。また、受け入れ企業による支援体制の確保や在留資格の審査も求められます。

それでは、具体的な要件について詳しくみていきましょう。

試験の合格

特定技能1号農業を取得するには、「特定技能評価試験(農業分野)」に合格することが必須条件です。この試験は、耕種農業と畜産農業の2分野に分かれ、それぞれの業務に必要な知識や技能を問われます。

主な試験内容は、以下のとおりです。

耕種農業と畜産農業の試験要件
分野 要件
耕種農業 作物の栽培管理、収穫、農業機械の操作に関する知識と技術
畜産農業 家畜の飼養管理、繁殖、衛生管理、農業機械の操作に関する知識と技術

 

日本語能力要件
項目 内容
日本語能力試験
(JLPT)
日本語を母語としない人向けの試験
N1(最難関)~N5(最も易しい)の5段階
N4レベルの能力 基本的な日本語を理解し、日常的な会話がある程度可能

技能実習2号を良好に修了している(該当者のみ)

すでに技能実習2号(農業分野)を修了した外国人は、試験を受けずに特定技能1号へ移行が可能です。この場合、試験の免除が認められるため、技能実習で習得した経験を活かしながら、特定技能の就労へスムーズに移行できます。

特定技能へ移行することで、より高度な業務に携わることが可能になり、賃金や労働条件の向上が期待できます。技能実習は1号から始まるため在留期間は原則1年間です。しかし、特定技能は更新をしながら最長5年間の就労が可能となり、一定の要件を満たせば特定技能2号へ移行し、在留期間の制限なく働くこともできます。雇用側にとっても、すでに日本での生活や業務に慣れた人材を継続的に雇用できるため、教育・指導の負担を軽減しつつ、即戦力として活用できるでしょう。

雇用契約の締結

特定技能1号を取得するには、日本国内の農業関連企業と特定技能外国人としての雇用契約を締結する必要があります。雇用契約には、以下の条件が含まれます。

  • 日本人と同等以上の報酬を受けること(最低賃金以上)
  • 単純労働ではなく、一定の技能を必要とする業務に従事すること
  • 社会保険・労働基準法の適用を受けること

このように、特定技能の外国人は日本人と同等の待遇が保証され、適正な労働環境のもとで働くことが求められます。

受入れ機関(企業)または登録支援機関による支援体制の確保

特定技能1号の外国人は、日常生活や業務の適応をサポートするための支援を受けることが必要です。そのため、受入れ企業は直接支援をおこなうか、登録支援機関に支援を委託して外国人が日本で生活しやすい環境を作らなければなりません。支援内容には、生活オリエンテーション、日本での行政手続きのサポート、トラブル対応などがあり、外国人が日本での生活や就労に適応しやすい環境を整えることが求められます。

特定技能2号農業の取得要件

特定技能2号農業は、特定技能1号よりも高度な技能や経験が求められ、長期間の就労や家族の帯同が可能になる在留資格です。資格を取得するためには、次のような要件があります。

それでは、具体的な要件を詳しくみていきましょう。

特定技能1号農業での実務経験

特定技能2号を取得するには、特定技能1号農業分野で一定期間の実務経験を積むことが前提です。具体的な年数は、政府の運用方針に基づいて決定されますが、基本的には数年間の経験が求められると考えておきましょう。

特定技能2号評価試験の合格

特定技能2号に移行するには、農業分野にて高度な技能や知識を証明する試験の合格が必須条件です。特定技能1号の評価試験よりも難易度が高く、管理業務や専門的な技術に関する知識が問われます。試験の内容には、耕種農業や畜産農業に関する高度な技能・設備管理・指導力などが含まれると覚えておきましょう。

雇用契約の締結

特定技能2号では、長期的なキャリアを前提とした雇用契約が求められます。特定技能1号と同様に、日本人と同等以上の報酬が保証され、適正な労働条件のもとで働くことが必要です。さらに、特定技能2号では、より専門性の高い業務や、部下の指導・管理といった役割を担うことも想定されます。

受入れ機関(企業)または登録支援機関の支援体制の確保

特定技能1号と同様に、受け入れ企業が直接支援をおこなうか、登録支援機関によるサポートを受けることが求められます。ただし、特定技能2号ではより高度な職務を担うことが前提のため、支援内容は特定技能1号ほど手厚いものでなくても構いません。

特定技能「農業」での外国人を採用方法

日本の農業分野は慢性的な人手不足が続いており、特定技能制度を活用した外国人の採用がますます重要になっています。特定技能の在留資格を持つ外国人は、一定の技術や知識を備えた即戦力として期待され、企業にとっても安定した労働力の確保ができます。採用にはいくつかの手順や準備が必要ですが、適切な対応をすればスムーズな受け入れができます。

それでは、特定技能「農業」における外国人の採用メリット、採用プロセス、企業が準備すべきポイントをみていきます。

特定技能「農業」で外国人を採用するメリットとポイント

特定技能の在留資格を持つ外国人は、一定の技術や知識を有しているため、即戦力として期待できます。特定技能「農業」は受け入れ人数に上限がないため、繁忙期に労働力を確保できたり、長期的に安定した雇用ができたりする点が受け入れ企業にとってメリットです。

さらに、特定技能制度では、企業側に生活支援の義務が課されているものの、技能実習制度と比べると制約は少なくなっています。そのため、比較的柔軟な雇用ができるのも特定技能のメリットです。さらに、同じ分野での転職が認められているため、雇用契約の見直しが必要になった場合でも対応しやすいです。これにより、企業と外国人労働者の双方にとって、より良い就業環境を整えることが可能です。

外国人採用の手順|特定技能試験~在留資格取得まで

特定技能の在留資格を持つ外国人をすぐ採用することはできません。まず、特定技能評価試験および日本語能力試験(N4以上)に合格した外国人であるか確認をして採用へと進みます。すでに日本国内にいる場合もあれば、海外からの採用となるケースもあり、それぞれの状況に応じた手続きが必要です。特に、海外から採用する場合はビザの申請や渡航手配など、追加の準備が求められます。

採用が決まると、雇用契約を締結し、在留資格の申請をおこないましょう。申請手続きは出入国在留管理庁でおこなわれ、審査を経て許可が下りれば就労が可能です。企業側は、外国人労働者が円滑に業務を開始できるよう、事前に職場環境を整えておくことが求められます。

採用後も、就業状況の報告や生活支援など、一定の義務が発生するため、受け入れ体制をしっかりと整えておくことが重要です。言語や文化の違いによるトラブルを防ぐため、日本での生活や労働環境についての説明を丁寧に理解できるまで伝えていきましょう。

受け入れ企業が準備すべき労働条件や支援体制の整備

外国人労働者を円滑に受け入れるためには、企業側が事前に準備すべきことが多いです。労働条件の明確化はもちろん、適切なサポート体制を整えなければなりません。また、特定技能の外国人は、日本人と同等以上の給与水準が求められるため、給与体系を見直し、社会保険の加入手続きを適切に進めることが不可欠です。

また、住居の確保や生活支援も重要なポイントです。地方の農業現場では、交通の便が限られていることが多いため、移動手段の確保や生活環境の整備を進めましょう。さらに、日常生活でのサポートを充実させることで、外国人労働者が安心して働ける環境を作ることができます。

受け入れ後も、定期的な面談を実施し、職場環境や業務内容に関する悩みを聞き取ることで、より良い労働環境を維持できます。特定技能の外国人は、長期間働くことを前提としているため、企業側も持続可能な雇用を意識し、働きやすい環境を整えることが重要です。

外国人の採用サポートは「@カイゴ」


今後の日本農業は、高齢化の進行や後継者不足により、安定した労働力の確保が一層重要です。なかでも、収穫期や繁忙期には人手が足りず、生産活動に支障をきたすケースも少なくありません。
持続可能な農業経営を実現するには、労働力の確保だけでなく、受け入れ環境の整備や技術の継承も求められています。しかし、外国人の採用は、在留資格の取得や手続きの煩雑さ、言語や文化の違いへの対応など、多くのハードルが存在します。

@カイゴ」は、そうした課題を解決するために、外国人採用をサポートし、特定技能や技能実習の採用支援や適切な人材マッチングから書類作成、入国後のフォローまで一貫してサポートします。外国人雇用を成功させるための強い味方となってくれます。詳しくは「@カイゴ」の公式サイトをご覧ください。
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まとめ

企業にとって、外国人労働者の受け入れは繁忙期の即戦力確保や雇用の安定につながります。しかし、給与や労働環境の整備、生活支援などの受け入れ態勢の構築が必須です。特定技能の外国人は転職が可能なため、職場環境の改善や定期的なフォローをしなければなりません。
農業の持続的発展には、外国人材の受け入れと働きやすい環境の整備が不可欠であり、企業や自治体、支援機関による積極的なサポートが今度も求められるでしょう。

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