コラム
在留カード再交付申請手続き|外国人社員が在留カードを紛失した際の手続き方法とは
特定技能
外国人社員が日本で生活する上で欠かせない在留カードは、紛失してしまうケースが考えられます。もし、外国人社員が在留カードを紛失すると生活に支障が出てしまうため、迅速な対応が求められます。
そこで本記事では、在留カード紛失に直面した方に向け、再発行手続きの仕方をわかりやすく解説します。在留カードについては、法律で決まっていることが多く、違反すると罰則もあるため慎重な対応が必要です。企業で雇用している外国人社員が在留カードを紛失してしまっても迅速に対応できるように参考にしてみてください。
目次
在留カードを紛失した場合、再交付申請は14日以内
在留カードは、海外から来た中長期在留者に交付されるカードであり、適法で日本に滞在していることを示す証明証です。
企業の外国人社員が在留カードを紛失した場合、まずは最寄りの警察署に紛失届を提出します。その後、出入国在留管理庁に再交付を申請する必要があります。紛失だけでなく、盗難に遭ってしまった場合も同様です。
再交付の手続きには、警察から渡される「遺失届出証明書」または「盗難届出証明書」が必要です。これらの書類は、再交付申請には欠かせないもののため、大切に保管してください。
出入国在留管理庁のウェブサイトには、在留カードを紛失した場合の再交付申請に関する詳細な情報が掲載されています。そこには、「当該事実を知った日から14日以内に出入国在留管理庁長官に再交付を申請しなければならない」ことが明記されています。
企業が適切な対応をおこなうことで、その後の生活への影響をなるべく小さくできます。事前に、再交付の手続きに関する情報を提供したり、必要書類の作成を支援したりなどができるよう、社員へのサポート体制を整えておけると安心です。
【義務】在留カードは常時携帯する
在留カードは常に携帯することが法律(入管法)で決まっています。ここでは、在留カードの携帯にまつわる規則を確認していきます。
永住者でも在留カードは携帯が必須
在留カードは、日本に滞在する外国人の方にとって、身分証明書としての役目を果たす非常に重要なものです。そのため、16歳以上のすべての外国人は、在留カードを常に携帯することが法律で決められています。
この義務は、在留資格の期限に関わらず適用されます。永住者や高度専門職2号ビザのように、在留資格の期限がない外国人の方であっても在留カードの携帯は必須です。
パスポートを持っていれば、在留カードを持たなくても良いわけではありません。入国審査官、入国警備官、警察官などから提示を求められた場合には、必ず在留カードを提示する必要があります。
もし、在留カードを携帯していなかった場合、法令違反となり罰せられる可能性があります。外国人社員の方には、財布などに入れて在留カードを常に携帯するよう、周知徹底してください。
在留カードの携帯義務が免除されるケース
一般的に、16歳以上の外国人は全員在留カードを常時携帯しなければなりませんが、以下のケースに該当する際は、必ずしも携帯せずとも問題ありません。外国人社員を持つ企業の方は、これらの例外についても理解しておけると安心です。
1. 16歳未満の方
16歳未満の外国人については、在留カードを常時携帯しなくても大丈夫です。そのため、保護者が代わりに保管しても問題ありません。
2. 特別永住者
「特別永住者証明書」を交付されている方は、特別永住者証明書を持参していれば、在留カードを携帯していなくても問題ありません。特別永住者証明書は、在留カードと同様に身分証明書として機能します。
3. やむを得ない場合
在留カードの更新手続きなど、行政書士に手続きを依頼している場合は、一時的に在留カードを預けることがあります。この場合も、行政書士から預かり証を発行してもらうなど、何らかの証明書類を用意しておきましょう。
在留カード不携帯時の罰則
在留カードを所持していなかったり、警察官などから提示を求められた際に提示を拒否したりした場合には、刑事罰の対象となる可能性があります。
出入国管理及び難民認定法第75条では、在留カードの携帯義務違反について規定されており、以下の罰則が定められています。
【在留カードを携帯していなかった場合】20万円以下の罰金
【提示を求められたにもかかわらず、提示に応じなかった場合】1年以下の懲役または20万円以下の罰金
在留カードは、その人がどのような在留資格で日本に滞在しているのか、その滞在期間がいつまでなのかといった情報を示すものです。そのため、在留カードを携帯していないと、不法滞在者と誤解される可能性があり、社会の秩序を乱すことにつながるおそれがあるため、厳重に管理されています。
違反した場合でも罰金ですむことがほとんどですが、前科がつくという点で、その影響は大きいと言えます。就職活動やビザの申請、次回の在留資格更新時など、将来にわたってさまざまな場面で不利になる可能性があるため気をつけなければなりません。
企業での在留カードの預かりは禁止
在留カードは常に携帯する必要があるため、企業側で外国人社員の在留カードを預かることはタブーです。
在留カードを預かることで外国人社員との間にトラブルが発生する可能性もあり、過去には実際に在留カードを保管していた企業が処分を受けた事例も報告されています。
外国人社員側から保管をお願いされるケースもありますが、その場合には常に携帯しなければならないことを伝えます。
在留カード再交付申請の手続き方法
紛失した在留カードが誰かに悪用されてしまうリスクも考えられるため、再交付の手続きはできるだけ早く進めましょう。万が一紛失してしまっても、パニックにならず、速やかに再交付申請ができるよう、手順を確認していきます。
【手順1】警察・交番での紛失届の提出
在留カードを紛失した場合、まず最寄りの警察署または交番に紛失届を提出することが最初のステップです。紛失届出証明書は、後に地方出入国在留管理官署で在留カードの再交付を申請する際に必要となります。
紛失届の提出は、本人または代理人がおこないます。代理人が手続きをおこなう場合は、本人の委任状が必要です。また、一部の警察署では、事前に遺失届出書の書式を印刷し、記入して提出できる場合があります。
近年では、オンラインで紛失届出証明書の申請をおこなえるサービスを提供している警察署もあります。警視庁では「警視庁行政手続オンライン」というサイトから手続きができます。このサービスを利用すると、警察署に直接行くことなく、電話で書類の受け取り日を調整し、都合の良いタイミングで書類を受け取れる点がメリットです。警察署が近くにない方や、忙しい方にとっては便利なサービスと言えます。ただし、警察署によって手続き方法が異なる場合がありますので、事前に確認することをおすすめします。
上記の他、紛失届を提出する際には、身分証明書(パスポートなど)の持参が必要です。また紛失した在留カードの情報(カード番号など)を覚えていれば伝えておくとスムーズな手続きがおこなえます。
【手順2】住居地にて入管へ再交付申請
警察署で遺失届出証明書を受け取ったら、次は地方出入国在留管理官署へ再交付申請をおこないます。
地方出入国在留管理官署は、全国に8か所の出入国在留管理局、7か所の支局、2か所の入国管理センターで構成されており、管轄区域が定められています。外国人労働者の住居を管轄する地方出入国在留管理官署を探し、そちらへ申請に向かいましょう。
多くの場合、各出入国在留管理局には出張所が設けられており、より身近な場所で手続きができるようになっています。
出入国在留管理局 | 出張所 |
札幌出入国在留管理局 | 函館出張所・旭川出張所・釧路港出張所・稚内港出張所・千歳苫小牧出張所 |
仙台出入国在留管理局 | 青森出張所・盛岡出張所・仙台空港出張所・秋田出張所・酒田港出張所・郡山出張所 |
東京出入国在留管理局 | 水戸出張所・宇都宮出張所・高崎出張所・さいたま出張所・千葉出張所・松戸出張所・立川出張所・新潟出張所・甲府出張所・長野出張所・新宿出張所 |
名古屋出入国在留管理局 | 富山出張所・金沢出張所・福井出張所・岐阜出張所・静岡出張所・浜松出張所
豊橋出張所・四日市港出張所 |
大阪出入国在留管理局 | 大津出張所・京都出張所・舞鶴港出張所・奈良出張所・和歌山出張所 |
広島出入国在留管理局 | 境港出張所・松江出張所・岡山出張所・福山出張所・広島空港出張所・下関出張所
周南出張所 |
高松出入国在留管理局 | 小松島港出張所・松山出張所・高知出張所 |
福岡出入国在留管理局 | 北九州出張所・博多港出張所・福岡空港出張所・佐賀出張所・長崎出張所
対馬出張所・熊本出張所・大分出張所・宮崎出張所・鹿児島出張所 |
例えば、東京出入国在留管理局には、11の出張所が設けられており、東京都以外に住んでいる方も千葉や埼玉にある出張所での手続きが可能です。
再交付申請の際には、遺失届出証明書に加え、パスポートなどの身分証明書が必要となります。申請がスムーズに進むよう、事前に必要な書類を準備しておきます。
申請手続き自体は、比較的短時間で終わることが多いですが、混雑状況によっては待ち時間が発生する場合もあります。余裕を持って手続きに向かうことをおすすめします。もし、申請当日に新しい在留カードを受け取れない場合は、後日、申請受付票やパスポートなどを持ち、再度地方出入国在留管理官署を訪れて、在留カードを受け取ります。
再交付の申請に必要な書類
在留カード再交付申請時に必要な書類は以下の通りです。
・在留カード再交付申請書
・遺失届出証明書、盗難届出証明書など
・旅券
・新しい在留カード用の顔写真
・在留カード漢字氏名表記申出書 ※漢字氏名の併記希望の場合
・委任状 ※申請を代理人に委任する場合に必要
在留カード再発行申請書や在留カード漢字氏名表記申出書などは、事前に出入国在留管理庁のホームページからダウンロードできます。
本人以外の代理申請はできる?
在留カードの再交付申請は、一定の条件を満たせば、代理人による申請、受領が可能です。企業の担当者は、所属する外国人社員の代理として申請手続きをおこなうことで、外国人社員が仕事を休む必要がなくなり、社員の負担を軽減できます。
代理人として申請できるのは、一般的に以下のような方々です。
・本人と同居する16歳以上の親族
本人が未成年である場合や、疾病などで申請に行けない場合などは、申請人との関係を証明する書類(住民票など)が必要になります。疾病の場合、診断書が必要になる場合もあります。
・取次行政書士、弁護士
専門的な知識と経験を持つこれらの専門家は、在留カードの再交付申請手続きを代行できます。
・申請人本人の法定代理人
未成年の子どもの親など、法的に代理権を持つ方が申請できます。
・地方出入国在留管理局長から申請の取次に関する承認を受けている企業の担当者
会社の担当者が、所属する外国人社員の代理として申請手続きができます。ただし、公益財団法人入管協会が主催する「申請等取次研修会」に参加し、資格を得る必要があります。この資格を取得することで、複数の外国人の方の申請手続きを代行することが可能になります。
代理人による申請の場合、申請人との関係性を証明する資料や申請人のパスポートのコピーなど必要な各種書類があるので、忘れず準備してください。
再交付にかかる所要時間
在留カードの再交付にかかる時間は、最短で即日交付が可能です。
ただしその手続きにかかる具体的な所要時間は、いつ申請をおこなうかや、どの出入国在留管理官署を利用するかによって異なります。申請手続きが円滑に進めば、その日のうちに新しい在留カードを受け取れます。しかし、申請者が多く、窓口が混み合っている場合は、もう少し時間がかかることもあるかもしれません。
再交付申請の受付時間は、一般的に9時から16時です。ただし、地域によっては、お昼休憩時間帯(12時〜13時)に窓口が閉まっている場合もあるため、事前に時間の確認をしておきましょう。
注意点は、申請時期の中でも、特に3月頃は混雑が予想されることです。多くの学校や企業の入社・入学時期と重なるため、出入国在留管理官署の窓口は大変混み合います。時間やスケジュールに余裕を持って手続きに向かうことをおすすめします。
また、申請が集中している時期や、必要な書類が不足している場合など、申請当日に新しい在留カードを受け取れないことがあります。このような場合は、後日、改めて出入国在留管理官署を訪れ、在留カードを受け取る必要があります。受け取り時には、申請受付票、パスポート、身分を証する文書などが必要です。
再交付にかかる手数料はどれくらい?
在留カードを再交付する場合、再交付手続きそのものにかかる手数料は基本的に無料です。紛失、盗難、破損など、どのような理由で再交付を申請する場合でも、原則として手数料は必要ありません。
ただし、再交付の手続きに際して、別途費用が発生する場合があります。
例えば、証明写真の費用です。再交付申請には、通常、顔写真が必要となります。写真館などで証明写真を撮る費用は、別途必要です。他に、弁護士や行政書士に再交付手続きを依頼する場合、その分の費用が発生します。費用は、依頼する内容や事務所によって異なりますが、数万円程度が相場です。
また、毀損などの理由以外で在留カードの交換を申請する場合には1,600円の手数料がかかります。
在留カードを紛失した際は、パスポートを携帯する
在留カードは、中長期で日本に滞在する外国人の方にとって必要不可欠な身分証明書です。普段は在留カードを携帯していれば、パスポートを常に持ち歩く必要はありません。しかし、在留カードを紛失してしまった場合、再交付申請期間中にはパスポートを携帯することを強くおすすめします。
警察官などに身分証明を求められた際に、在留カードの代わりにパスポートを提示できるようにするためです。その際は遺失届出証明書も一緒に提示し、「在留カードを紛失して、再交付の手続き中です」などと説明することで、スムーズにやり取りを進められます。在留カードもパスポートも携帯していない場合には不法滞在者と誤解され、トラブルに巻き込まれる場合があります。
また、在留期間更新などの手続きのために例外として在留カードとパスポートを行政書士に預ける場合もあるでしょう。その際は、預かり証を携帯することで、身分を証明できます。
海外で在留カードを失くしたらどうする?
在留カードを海外で紛失した場合も、基本的には国内で紛失した際と対応の流れは同じであるため、慌てずに行動することが大切です。まずは、現地の警察署で紛失の届け出をおこない、証明書を発行してもらいます。この証明書は、後におこなう在留カードの再交付手続きで必要となります。
また、海外の在外日本大使館などでは、在留カードの再交付手続きをおこなうことはできません。在留カードの再交付は、日本に再入国してから、管轄の出入国在留管理局でおこないます。
日本に再入国する際は、査証(VISA)免除国籍の方であれば、再入国許可(みなし再入国許可も含む)を受けて、特別な手続きなしに再入国できます。ただし、再入国出国記録は必要です。
一方で査証(VISA)免除国籍以外の方の場合は再入国前に「再入国許可期限証明書」を取得する必要があります。同証明書がなければ、搭乗橋日や出国拒否される可能性も高くあります。証明書は、日本にいる友人や家族、企業の職員などに連絡をして発行してもらい、海外にいる本人に国際郵便またはメールで送付してもらわなければなりません。なお、証明証の発行には委任状と現地の警察で受け取った紛失届が必要なため、それらの書類を日本に郵送する必要があります。
日本に帰国後、14日以内に管轄の出入国在留管理局で在留カードの再交付申請をおこないます。この際にも、海外で受け取った紛失証明書が必要です。
汚損した場合、再交付申請はできる?
在留カードが汚れてしまい、カードの表面が損傷したり、内蔵されているICチップが破損したりした場合でも、再交付申請ができます。
在留カードは、個人情報や在留資格などの情報がICチップに記載されています。このICチップが破損してしまうと、さまざまな手続き時に、カードの信憑性が疑われ、手続きがスムーズに進まない可能性があります。
汚損による再交付の手続きは、紛失した場合と基本的に同じで、手数料もかかりません。
まとめ
外国人社員が日本で生活する上で欠かせない在留カードですが、紛失や汚損をする事態に見舞われる可能性があります。もし、社員が在留カードを紛失した場合、迅速な対応が求められます。在留カード関連の決まり、海外で紛失した場合の対応など、在留カードに関するさまざまな情報を解説しました。
在留カードは、法律で定められた重要な身分証明書です。紛失した場合には、14日以内に再交付申請をおこなうなど、適切な手続きをおこなう必要があります。企業の担当者の方は、在留カードを紛失して不安を抱える外国人社員に、適切なアドバイスやサポートをおこなえるよう、本記事で紹介した内容を参考にしてみてください。出入国在留管理庁のHPでは、在留カードの再交付申請についての情報や在留カード全般に関するQ&Aページなどが見られるので、ぜひあわせて参照してみてください。