コラム
外国人就労支援対策について|登録支援機関・サービスセンター・NPO一覧とそれぞれの特徴
外国人
専門的・技術的分野での外国人の就業促進を推進しており、高度外国人材の活用を促進するための施策を展開しています。
「外国人就労支援対策をしたいが具体的にどのような支援が受けられるかわからない」方もいるのではないでしょうか。本記事では、登録支援機関、サービスセンター、NPOなど、外国人労働者の雇用や生活を支援する各種団体について紹介します。企業が利用できる支援の特徴やメリットを解説します。
外国人就労の現状
現在、日本における外国人労働者の数は年々増加しており、厚生労働省の2023年10月末時点の報告によれば、外国人労働者数は約205万人に達しています。この数字は、企業に外国人雇用状況の届出が義務化された2007年以降、過去最高を更新しました。外国人労働者の推移を示すグラフを見ると、前年同期比では12.4%増加しており、外国人労働者の存在が日本の労働市場においてますます重要となっていることを示しています。
在留資格別でみると、特に、「身分に基づく在留資格」を持つ労働者が約62万人で最も多く在籍しています。身分に基づく在留資格とは、永住者」「定住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」などを指す在留資格です。次に「専門的・技術的分野」での在留資格を持つ労働者が多く、前年比24.2%増加しています。「技能実習」や「資格外活動」による労働者数も増加傾向です。
外国人労働者の国籍別では、ベトナム、中国、フィリピンが上位を占めており、特にインドネシアやミャンマーからの労働者が急速に増加しています。産業別では「製造業」が全体の27.0%を占め、前年からの増加率でみると「建設業」で24.1%増と外国人労働者の需要が高まっていることがわかります。
外国人労働者は、日本の深刻な人手不足を補う存在として、2024年以降もさらに需要が拡大する見込みで、受け入れ企業は外国人従業員に対する多角的な支援を強化する必要があります。
(参照元:厚生労働省 「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】(令和5年 10 月末時点)
外国人就労の課題
外国人労働者の受け入れにおいて、日本はいくつかの課題に直面しています。まず、言語や文化の違いから生じるコミュニケーションの問題が大きな障壁となっています。特に日本語要件がない留学生や技能実習生においては、アルバイト先や実習先での労働条件や法令の違反が発生しやすく、労働トラブルが頻発しています。一方、日本語能力が高く、技術や専門知識を持つ外国人労働者は、この問題は比較的少ない傾向にあります。
つぎに、留学生の定着率の低さも課題です。日本で学んだ外国人留学生は、日本語能力が高く(日本語能力試験N3、N2レベル)日本の文化やマナーに精通しているにもかかわらず、日本の会社に就職する割合が少ないのが現状です。この問題を解決するためには、企業が外国人留学生の新卒採用に積極的に取り組むことが重要です。
上記の課題を踏まえつつも、日本の深刻な人手不足の解決策として、外国人労働者の受け入れは今後も拡大する見込みです。実際に、2019年4月には「特定技能」という新しい在留資格が創設され、特に介護やビルクリーニングなどの分野で外国人労働者の受け入れが進んでいます。
企業は、適切な雇用管理をおこない、外国人労働者が安心して働ける法令遵守と労働環境の整備が求められます。支援機関や官民による政策を活用することが、今後の外国人労働者受け入れ成功の鍵となります。
外国人の就労支援施設一覧
日本で働く外国人労働者や受け入れ企業が利用できる、外国人就労支援施設の代表的なものについて、施設の概要や支援内容などを解説します。
外国人雇用サービスセンター
外国人雇用サービスセンターは、厚生労働省が運営する機関で、外国人留学生や専門的・技術的分野の在留資格を持つ外国人労働者に対する就職支援をしています。主な目的は、外国人労働者が日本企業で適切に働けるよう、就職活動や雇用管理をサポートすることです。東京、大阪、名古屋、福岡にセンターがあり、外国人の求職活動や企業の雇用管理を支援しています。
高度外国人材向けの支援では、職業相談や職業紹介、企業への雇用管理に関する指導がおこなわれています。これは、専門的・技術的分野の在留資格を持つ外国人や、日本での就職を希望する外国人留学生が対象です。労働者を受け入れる事業主に対しては、外国人の雇用手続きや在留資格の管理、入社後の支援についての助言や指導を提供しています。
さらに、外国人留学生向けには、就職ガイダンスやインターンシッププログラム、就職面接会が定期的に開催されています。これらのプログラムは、留学生が早期から日本での就職に向けた準備を進められるように設計されています。企業にとっては、優秀な外国人材を採用する機会が増えるだけでなく、雇用管理に関する相談や手続きのサポートが受けられるため、事前に不安を解消した上で外国人労働者を受け入れられます。
登録支援機関
登録支援機関は、特定技能外国人を受け入れる企業が、外国人労働者に対して必要な支援をおこなう際、その業務を代行する機関です。特定技能外国人を雇用する場合、企業(受け入れ機関)は、外国人労働者が日本国内で円滑に働き、日常生活を送れるよう支援計画を作成し、その実行が義務付けられています。支援内容は、業務指導だけでなく、ビザ申請・取得サポート、生活支援、在留資格の管理、オリエンテーションの実施、日常の相談対応など広範囲にわたります。これらを自社で全て対応することが困難な場合、登録支援機関に支援業務を委託することができます。
登録支援機関は、出入国在留管理庁によって登録された事業者で、業界団体、行政書士、社労士、民間法人などが認定を受けて活動しています。登録支援機関は、受入れ機関に代わって外国人労働者の支援をおこなうため、受け入れ企業は本来の業務に専念しつつ、安心して外国人を雇用できる環境を整えられます。
登録支援機関に支援を委託しなければならないケースとして、直近2年間に外国人労働者の受け入れ実績がない企業や、外国人労働者の生活支援に従事した経験のある社員がいない場合が挙げられます。こうした企業は、受け入れ機関としての要件を満たさないため、支援業務の委託が必須となります。特に、初めて外国人労働者を雇用する企業にとっては、専門的な知識や経験が必要となるため、自社での対応が難しく、登録支援機関への委託が現実的な選択肢です。
一方、外国人労働者の受け入れ実績がある企業で、支援責任者や担当者が配置されている場合は、支援業務を自社でおこなうか、登録支援機関に委託するかを選択できます。すべてを委託することも可能ですし、特定の支援部分のみを外部に委託する柔軟な対応も可能です。
登録支援機関に委託することで、企業は支援業務にかかる負担を軽減し、外国人労働者が抱える悩みやトラブルを第三者として相談しやすくなるため、問題解決の効率が向上します。また、日本人社員の負担軽減にもつながり、結果として業務の効率化が図れます。
NPO
NPO(特定非営利活動法人)は、日本で働く外国人労働者の就労や生活を支援する重要な役割を果たしています。多くのNPOが、外国人労働者が直面する課題に対して、企業や自治体と連携しながら多岐にわたるサポートを提供しています。それぞれのNPOが提供する支援内容は、就労支援や生活サポート、在留資格の手続き支援、人権保護活動など、対象とする外国人のニーズに応じて異なります。企業担当者が、自社の外国人労働者が直面する問題や必要な支援に基づいて、適切なNPOを選定するサポートができるでしょう。
NPOの一例として、都内に拠点を構えるNPOでは、留学生や技能実習生など日本で働く外国人労働者を対象に、労働条件の改善や人権侵害を防ぐための活動をおこなっています。このようなNPOは、外国人労働者が日本社会で適切な待遇を受け、安心して働ける環境づくりを支援しています。
また、NPOは外国人労働者が職を失った際の生活支援や相談窓口を提供することも多く、企業にとっては、自社で対応しきれない部分のサポートを受けられる有用なパートナーとなります。企業が外国人労働者を受け入れる際、NPOとの連携を検討することで、労働者の定着率向上やトラブル防止に貢献することができるでしょう。
ハローワーク
ハローワークは、外国人労働者を受け入れる企業にとって、無料で利用できる貴重な支援機関です。特に外国人居住者や労働者が多い地域のハローワークには「外国人雇用サービスコーナー」が設置されており、通訳者を配置して言語のサポートを提供しています。このコーナーでは、外国人労働者に対し、専門の相談員による就職相談や、事業所向けのサポートもおこなっています。
企業がハローワークを利用する主なメリットは、無料で求人情報を公開できる点や、外国人雇用管理アドバイザーへの相談ができる点です。アドバイザーは、外国人雇用における法律や労務管理、職場教育など、専門的なアドバイスを提供しており、企業が直面する課題をサポートします。例えば、外国人の労働契約や福利厚生の設定、日本語に不慣れな従業員の職場教育方法などについて相談することができます。
さらに、ハローワークの支援は、単に外国人労働者の採用だけでなく、定着支援にも力を入れています。特定技能外国人を含む外国人労働者が安心して働ける環境を整えるため、企業が適切な雇用管理をおこなうためのサポートも提供しています。
民間団体
民間団体は、外国人労働者の受け入れを考える企業にとって、幅広い業界に対応した就職支援を提供する頼れる存在です。例えば、リクルートやマイナビ、リクナビといった大手就職支援サイトを運営する企業は、外国人求職者と企業のマッチングサービスをおこなっており、企業が求める人材を迅速に見つけるサポートをしています。
民間団体の大きなメリットは、幅広い業界へのアクセスと手厚いサポートです。担当者が企業ごとにつき、個別にサポートをすることが一般的であり、企業のニーズに応じた外国人労働者の紹介が受けられます。さらに、民間団体は民間企業とのネットワークが広く、業界の最新情報や企業文化に精通しているため、外国人労働者がスムーズに日本の職場に適応できるよう手助けが可能です。
ただし、民間団体のサービスを利用する場合、紹介される外国人労働者のスキルや適性が企業の期待に必ずしも合致するわけではない点には注意が必要です。また、競争が激しい分野では、迅速なマッチングが難しいこともあります。
企業が外国人労働者の採用を成功させるためには、民間団体のサービスを上手に活用し、幅広いサポートを受けながら労働者と企業の双方にメリットのある環境を整えていくことが重要です。
外国人雇用をする企業事への支援
最後に、外国人雇用をおこなう企業が活用できる2つのサービスを紹介します。
外国人材採用サービス
外国人材採用サービスは、企業と外国人求職者を効果的にマッチングさせ、スムーズな採用プロセスをサポートします。多くの外国人材採用サービスは、専門のエージェントを通じて、企業のニーズに合った外国人労働者を紹介し、書類選考や面接の調整まで包括的な支援を提供します。
このサービス最大のメリットは、専門知識を持つエージェントが手続きを代行してくれるため、企業は煩雑な手続きから解放され、採用にかかる時間と労力を大幅に軽減できる点です。また、外国人雇用に関する法規制や在留資格に精通したプロフェッショナルがサポートするため、企業は法的リスクを最小限に抑え、安心して採用を進めることができます。
さらに、外国人材採用サービスの多くは、日本語が不慣れな労働者に対して英語や中国語など多言語でのサポートが充実しており、就労後の定着率を高めるためのフォローアップもおこなっています。職場での文化的な違いによる摩擦を軽減するための研修や、言語サポートが提供されることもあります。
サービス利用にはコストが発生する場合が多いですが、質の高い外国人材を確保できるため、長期的な投資と考える企業も増えています。企業が外国人材採用サービスを活用することで、円滑かつ効率的な採用プロセスを実現できるでしょう。
登録支援サービス
登録支援サービス(登録支援機関)は、政府から認可を受けた企業や団体で、外国人労働者がスムーズに日本での生活と就労開始ができるようにさまざまな支援を提供します。具体的には、住居探し、公共サービスの利用方法、生活上のトラブルへの対応、職場でのコミュニケーションサポートなど、日常的な支援を企業に代わって実施します。
企業は、外国人労働者の採用や支援に関する負担が軽減し、本業に集中することができます。さらに、専門知識を持つ支援機関が関わることで、法令遵守や外国人の定着率の向上など受け入れ体制の強化も期待できます。自社のニーズに合った登録支援機関を選ぶことで、安心して外国人雇用を進めることができるでしょう。
まとめ
今回は外国人労働者の受け入れを検討している企業が、活用できる支援機関やサービスを紹介しました。日本国内では、登録支援機関やNPO、外国人雇用サービスセンターなど、さまざまなサポート機関が存在し、法的手続きや労働者の生活支援を提供しています。これらの機関を活用することで、企業は外国人労働者の雇用を円滑に進め、安定した雇用環境を整えることが可能となります。記事を参考に、自社に合った適切な支援機関の選択をしてください。