コラム

外国人の派遣雇用にはどんな注意が必要?メリット・リスク・注意点なども紹介

外国人

2024/10/18
2024/10/18

日本の労働市場は、少子高齢化や労働力不足の影響を受け、人材確保のためにますます多様な人材を求めるようになっています。その中でも、国籍を問わない外国人労働者の派遣雇用は、企業が必要なスキルや経験を迅速に確保できる手段として注目されています。派遣社員として働く外国人は、豊かな文化や多言語スキルを持ち込み、企業の国際化を進める重要な役割を果たしています。しかし、外国人の派遣雇用にはメリットだけでなく、リスクや注意点も存在します。本記事では、外国人を派遣雇用する際の方法や注意点、メリットからリスクについてまでを詳しく解説します。

外国人の雇用方法は?

外国人を雇用する方法には以下の3つがあります。

  1. 正社員
  2. アルバイト
  3. 派遣社員

それぞれの雇用形態の考えを解説していきます。

①正社員

日本企業では人手不足を背景に、外国人を正社員として募集する傾向が年々増加しています。外国人労働者の採用は、労働力不足を補うだけでなく、専門的な知識や語学力を持つ人材を確保できるというメリットがあります。特に、グローバル事業を展開する企業にとっては、海外経験を持つ人材は貴重な存在です。

しかし、外国人を正社員として雇うためには、就労ビザや在留資格の取得が不可欠であり、入管への申請手続きが必要です。この手続きは面倒で、在留資格の範囲外の仕事をさせると、入管法に違反し、不法就労助長罪に該当する恐れがあります。雇用したその後も、適法な状態を維持するためのフォローや管理が重要です。

外国人労働者を積極的に採用する企業は、労働人口の減少に対応し、長期的な労働力を確保できるでしょう。

②アルバイト

正社員としての雇用とは異なり、外国人をアルバイトとして雇用するケースも増えています。外国人留学生は「留学」の在留資格を持っており、「資格外活動の許可」を申請し取得すれば、飲食店のスタッフやレジ業務などの単純労働に従事することができます。これは、正社員としての就労ビザでは認められない働き方であり、アルバイトのメリットの一つです。

一方で、アルバイトには「週28時間以内」という厳しい労働時間の制限があります。この28時間には残業も含まれ、複数の企業で働いている場合でも、すべての勤務時間を合算して管理する必要があります。制限を超えて働かせると、不法就労助長罪に該当し、企業が処罰される恐れがあるため、時間管理が重要です。

また、風俗営業やパチンコ店など一部の業務は外国人アルバイトに対して禁止されています。アルバイトの雇用は幅広い業務を任せられる利点がある一方で、時間や業務の管理に手間がかかるデメリットも存在します。

③派遣社員

外国人を派遣社員として雇用することは、企業にとってリスクを抑える手段の一つです。正社員として雇用する場合、日本語のコミュニケーション能力の不足や、価値観の違いによる早期退職などの問題が発生する可能性がありますが、派遣形態であれば、これらのリスクを最小限に抑えることができます。また、派遣形態は、外国人にとっても在留資格を取得できるチャンスや、キャリアの第一ステップとして働けるというメリットがあります。

企業側としては、必要に応じて柔軟に人材を確保でき、外国人本人も長期的な滞在をしながら様々な業務経験を積むことができるので、両方にメリットがあります。派遣社員としての雇用は、双方にメリットをもたらし、ウィンウィンの関係を築きやすいのが特徴です。

しかし、デメリットも存在します。派遣社員は短期間での退職を前提にすることが多く、長期間働き続ける人材が入社しづらい点です。このため、長期的な雇用を希望する企業にとっては、派遣形態が適さない場合もあります。

外国人を派遣雇用するメリット

次に外国人を派遣雇用するメリットについて解説します。

1.人手不足を解消できる

外国人を派遣雇用することの最大のメリットは、深刻な人手不足の解消に貢献できる点です。日本では少子高齢化が進み、特に若年層の労働人口が減少しているため、企業は必要な人材を確保することが難しくなっています。このような状況の中で、外国人労働者を派遣社員として雇用することで、企業が求めるスキルや経験を持つ人材に迅速にアクセスできるようになります。

また、外国人労働者は、比較的しっかりとしたモチベーションを持って働く方が多く、母国への仕送りや、在留資格(就労ビザ)を維持するという考えで真面目に業務に取り組む姿勢が見られます。上記の理由から、派遣形態を利用することで、企業側は求人広告や採用コストを抑えつつ、即戦力となる労働力を確保することが可能です。結果的に、派遣社員を活用することで、慢性的な人手不足の問題を効果的に解消することが期待できます。

2.多言語対応が可能

外国人を派遣雇用することの大きなメリットの一つは、多言語対応が可能になる点です。グローバル化が進む現代において、企業は外国人顧客や海外企業とのやりとりが増加しています。派遣社員として外国人を雇用すれば、対応できる言語が広がり、顧客サービスの質を向上させることができます。

特に、外国人スタッフは自身の母国語やその他の言語スキルを活かし、海外との取引や説明、多言語を必要とする業務に貢献できます。これにより、企業は近年需要が増しているインバウンドへの対応力を強化し、外国人顧客や国際的な取引先とのコミュニケーションがスムーズにおこなえるようになります。

さらに、多言語対応だけでなく、異なる文化や価値観を持つ外国人労働者が社内にいることで、企業のグローバルな視点が広がり、サービスの多様化や新たなビジネスチャンスの発見にもつながります。このように、外国人の派遣雇用は、単に言語スキルを補うだけでなく、企業の競争力強化にも貢献できる重要な要素です。

3.求める人材が確保しやすい

外国人を派遣雇用することで、企業が求めるスキルや経験を持った人材をより容易に確保できる点も大きなメリットです。特に、登録スタッフを多数抱えている人材派遣会社に依頼することで、企業が必要としている専門スキルや技術を持つ外国人労働者を見つけやすくなります。派遣労働者は既にスキルが備わっている場合が多く、即戦力として活躍できる可能性も高いため、企業側の負担を軽減します。

また、派遣形態での雇用は、繁忙期など特定の期間や時間帯に柔軟に対応することが可能で、企業が必要なタイミングで適切な人材を確保できる点も大きな魅力です。

派遣会社が事前に企業のニーズを判断し、最適な人材を提供するため、ミスマッチを防ぎつつ、効率的に業務を遂行できる人材を見つけやすくなります。このように、外国人派遣雇用は、企業が求める人材をスムーズに確保し、長期的な労働力不足の解消にも寄与する有効な手段でしょう。

4.煩雑な手続きを代行できる

外国人を派遣雇用する際のメリットは、派遣会社が煩雑な手続きを代行してくれることです。特に、外国人労働者を日本で雇用する場合、複雑な手続きや資料作成が必要になります。これらを自社でおこなうとなると非常に大きな負担です。
具体的には、在留資格の申請、労働契約書の作成、社会保険や税金に関する手続き、さらには労務管理に至るまで、多くの事務作業が求められます。

しかし、派遣会社を通じて外国人労働者を受け入れることで、これらの手続きを専門のスタッフに任せることができ、企業の負担を大幅に軽減することが可能です。派遣会社は、法的な手続きを熟知しており、正確かつ迅速に対応してくれるため、企業側は本業に専念できます。また、初めて外国人を受け入れる企業にとって、派遣会社のサポートがあることで、安心して受け入れを進めることができる点も重要です。

さらに派遣会社は、労務管理や書類手続きの専門家としての役割を果たし、万が一のトラブルを未然に防ぐためのサポートも行います。これにより、企業は法的な問題を心配することなく、外国人労働者との雇用関係を安定させられます。このように、煩雑な手続きの代行は、外国人派遣雇用のメリットの一つと言えるでしょう。

5.外国人の試験的な採用が可能

外国人を派遣雇用するメリットの最後は、試験的に外国人労働者を採用できる点です。通常、外国人を正社員として雇用する場合、文化的な違いや日本語能力の問題など、事前に見えないリスクがいくつも存在します。しかし、派遣の形であれば、これらのリスクを最小限に抑えながら、実際の業務を通じて外国人労働者の適性を評価できます。

例えば、派遣期間中に外国人労働者の日本語能力や業務遂行能力、チーム内でのコミュニケーションの質などを観察できます。これにより、企業は想定していた能力に達していない場合や、価値観が合わない場合でも、容易に契約を終了できるため、企業にとっては大きな安心材料となります。正社員としての採用には多くの費用や手間がかかりますが、派遣であれば派遣費用のみで済むため、無駄なコストをカットできるメリットがあります。

また、外国人労働者にとっても、職場環境を実際に体験しながら自分の適性や志向を確認する機会となります。こうした相互の観察と評価を通じて、企業と外国人労働者の双方が満足できる雇用関係を築くことが可能です。このように、外国人の試験的な採用ができる点は、双方にとってリスクを軽減しながら理想的なマッチングを実現するための効果的な手段と言えるでしょう。

外国人の派遣雇用で起こりうるリスク

派遣雇用のメリットを説明してきましたが、少なからずリスクもあります。あらかじめ派遣雇用で起こりうるリスクを理解しておくことで、万が一の時にもスムーズに対応できます。

1.意思疎通が難しい

外国人労働者を派遣雇用する際の最も大きなリスクは、意思疎通の難しさです。これは主に、日本語の能力の差に起因します。外国人労働者の中には、日常会話はできても専門用語や敬語を理解できない人が多く、一緒に働く上で業務に必要なコミュニケーションがスムーズにおこなえない可能性があります。

例えば、基本的な業務内容が理解できなかったり、指示が曖昧なまま作業を進めてしまうことで、ミスやトラブルが発生することも考えられます。特に、安全や品質に関連する業務では、このようなコミュニケーションの不安が深刻な結果を招く恐れがあるので注意が必要です。

このリスクを軽減するためには、業務内容を具体的かつ明確に伝えることが不可欠になります。また、必要に応じて翻訳ツールを活用したり、理解度を確認したりすることで、相互理解を深める努力が求められます。さらに、コミュニケーションを促進するための環境を整え、スタッフ同士が気軽に質問し合える体制を作ることが、労働環境の改善につながるでしょう。

2.価値観や文化の違いによるトラブル

外国人労働者を派遣雇用する際のリスク2つ目は価値観や文化、習慣の違いです。日本の「礼儀」や「謙遜」といった文化的価値観は、海外ではあまり重視されないことが多く、これが職場での誤解や摩擦を生む原因となることがあります。例えば、コミュニケーションのスタイルやビジネスマナーの違いから、意図しないトラブルに発展する可能性などです。

また、宗教的な背景によって、礼拝の時間や食事制限がある場合もあります。こうした文化的・宗教的な考え方を無視すると、チーム全体の雰囲気を悪化させ、協調性の低下を招くことがあります。その結果、業務の効率性が損なわれ、チームワークに影響を与えることも考えられる点も注意です。

このようなリスクを軽減するためには、異なる文化に対する理解を深めることが不可欠です。派遣会社を通じて事前に情報やサポートを得ることで、企業は必要な対策を講じやすくなります。具体的には、異文化トレーニングを実施したり、職場でのコミュニケーションのルールを設定したりすることが効果的です。また、周囲の人たちが互いの文化や価値観を尊重し合うことで、円滑なコミュニケーションを促進し、より良い労働環境を築くことができるでしょう。

3.受け入れまでに時間がかかる

外国人労働者を派遣雇用する際のリスク3つ目は、受け入れまでに時間がかかることです。日本で働くためには就労ビザを取得する必要があり、この手続きには通常1ヶ月から3ヶ月程度の期間がかかります。そのため、急いで人材を確保したい場合には、障害となる場合があります。

また、就労ビザの取得が遅れることで、予定していたプロジェクトや業務の進行が妨げられることも考えられます。これにより、企業の戦略や計画に影響が出る可能性もあるため、受け入れ準備を早めに進めることが重要です。

しかし、派遣会社の利用でこのプロセスを効率化できます。派遣会社では、ビザの管理や手続きもサポートしてくれることもあるため、必要なタイミングで必要な人材を確保することが容易です。外国人労働者の受け入れを検討している企業は、時間的余裕を持った計画を立て、派遣会社の活用も視野に入れるとよいでしょう。

4.不法就労のリスク

外国人労働者を派遣雇用する際に特に注意が必要なのが、不法就労のリスクです。日本で外国人労働者が働くには、適切な在留資格や就労ビザが求められます。不法就労とは、外国人がこれらの許可を得ずに働くことを指し、これは法律違反です。不法就労が発覚すると、外国人本人だけでなく、雇用していた企業も罰則を受ける可能性があります。罰則には、3年以下の懲役または罰金300万円以下の罰金(入管法第73条の2)が科されるため、企業の信用や評判に深刻な影響を及ぼすこともあるでしょう。

また、最近では不法就労に対する取り締まりが厳格化しており、無知や誤解に基づく言い訳は通用しなくなっています。したがって、外国人労働者を受け入れる企業は、事前に採用する労働者の在留資格をチェックし、必要な法的手続きをしっかりとおこなうことが不可欠です。法令遵守している派遣会社を選ぶことで、法律を遵守した雇用が可能となり、不法就労のリスクを低減させられます。加えて、企業内に入管法についての専門知識を持つ担当者を置くか、外部の専門家の意見を求めることも、今後のトラブルを避けるためには重要です。

5.長期間働いてもらえない場合がある

外国人労働者を派遣雇用する際のリスクの最後は、長期的に働いてもらえない可能性です。理由として挙げられるのは、就労ビザの制限です。ビザの関係で働ける期間が限られている場合、短期間での離職が避けられないことがあります。また、就業前に帰国日が決まっている場合も多く、そのために期待していた労働期間が確保できないこともあるでしょう。

さらに、外国人労働者の中には、故郷に残る家族のためや祖国の復興を目的として働いている人も少なくありません。そのため家族や国の状況によって、急な帰国を余儀なくされる可能性もあります。

外国人労働者を受け入れる際は、雇用契約の内容や労働者の状況について十分な情報を収集し、長期的な雇用の可否について検討することが重要です。

外国人を派遣で雇用する際の注意点

最後に、外国人の派遣で雇用する際には注意点があります。

  1. 在留資格の確認する
  2. 外国人雇用状況の届出が必要
  3. 派遣終了後の退職証明書の発行をする
  4. 禁止されている業種がある

それぞれを説明していきます。

1.在留資格の確認が必要

1つ目は、在留資格の確認です。出入国管理及び難民認定法に基づき、外国人は定められた在留資格の範囲内で活動することが認められています。そのため、雇用主は、外国人労働者の在留カードなどの書類を確認し、就労が許可されているかどうかをしっかりと確認しましょう。

また、派遣で雇用する場合、在留資格の該当性は派遣先での業務内容になります。派遣会社が申請した在留資格が、実際の業務内容に適合しているかどうかを確認することが重要です。もし不適切な内容で申請が行われていると、後に在留資格が取り消されるリスクがあります。したがって、雇用主は派遣会社と連携し、外国人の在留資格が自社の業務内容に合致しているかを事前に確認しておくことが必要です。

2.外国人雇用状況の届出が必要

2つ目は、日本人を雇う場合には求められない特別な手続きが必要となります。その中でも特に重要なのが「外国人雇用状況の届出」です。この届出は、全ての事業主に対して義務付けられており、怠った場合や虚偽の内容で届け出を行った場合には、30万円以下の罰金が科される可能性があります。

この届出は、外国人を正社員として雇用する場合だけでなく、アルバイトや派遣社員として受け入れる場合にも必要です。特に派遣社員の場合、実際の雇用契約は派遣元会社が締結しますが、届出の義務はその派遣会社にあります。そのため、派遣先企業は派遣元が適切に届出をおこなっているか確認することが重要です。

また、外国人労働者が離職した際にも同様の届出が必要となるため、雇用の開始時だけでなく、離職時にも手続きが行われているか確認しておくことが求められます。適切な手続きを怠ることがないよう、事前に確認を行いましょう。

3.派遣終了後の退職証明書の発行をする

3つ目は、退職証明書の発行が必要となります。これは、在留資格の変更や就労資格証明書の交付を申請する際に必須の書類であり、適切に準備することが重要です。退職証明書には特定の書式は設けられていませんが、一般的には雇用期間や業務内容、職位、賃金、退職の理由などが記載される事が多いです。

退職証明書の発行は、基本的に派遣社員の雇用主である派遣会社がおこなう責任があります。しかし、完全に任せきりになるのではなく、発行手続きが適切に行われているかどうかを事前に確認しておくことで、後のトラブルを回避できます。

なお、永住者や日本人配偶者など、特別な在留資格を持つ外国人の場合は、退職証明書は必要ありません。また、外国人労働者が退職した際には、雇用保険被保険者資格喪失届をハローワークに提出することで、本人が入管に届け出を行う必要がなくなる点も留意しておきましょう。

4.禁止されている業種がある

4つ目は、法律で定められた禁止業種についての理解が不可欠です。労働者派遣法では、特定の業種における派遣が禁止されています。具体的には、禁止されている業種は下記の5つです。

■建設業
■港湾運送業
■警備業
■医療関連業
■士業(弁護士や税理士など)

これらの業種で派遣をおこなった場合、派遣会社は刑罰の対象となり、派遣先企業も是正勧告を受ける可能性があります。この勧告を無視すると、企業名が公表されるリスクがあり、社会的な信頼を損なう結果につながる恐れがあるでしょう。

さらに、禁止業種で外国人労働者を受け入れた場合、「労働契約申込みみなし制度」が適用されることもあります。この制度により、労働者が契約を承諾すると、派遣会社と締結していた契約と同等の条件で直接雇用契約を結ばなければなりません。したがって、事前に法律や規制を確認し、適切な手続きをおこなうことが重要です。特に、公共施設や国防関連産業では厳しい制限が設けられているため、注意が必要です。

まとめ

外国人を派遣雇用することは、企業にとって人手不足を解消する有効な手段であり、多様なスキルと視点を取り入れることで、業務の効率化や国際競争力の向上につながります。しかし、派遣雇用においては、法律や文化の違いを理解し、適切なサポートを提供することが求められます。外国人労働者が快適に働ける環境を整えることで、企業はより良い成果を上げることができるでしょう。今後ますます多様化する労働市場の中で、外国人の派遣雇用は、企業の成長を支える重要な要素となると考えられます。

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