コラム
ミャンマーの文化や習慣は?日本の文化との違いやNG行為について紹介
外国人
ミャンマーは、仏教が深く根付いた豊かな文化と歴史を持ち、家族や地域社会を大切にする国です。年長者への礼儀や家庭を大切にするなど日本と似ている一方で、異なる文化的習慣も存在します。そのため、日本では当たり前の行動でも、ミャンマーでは慎重に扱わなければならない場合があります。両国の文化の違いを理解し、尊重し合うことが何より大切です。
この記事では、ミャンマー文化や習慣を知るとともに、日本の文化との違いやNG行為について解説していきます。
目次
ミャンマー文化と日本文化・習慣の違い
ミャンマーの文化は、仏教や家族を中心とした価値観が深く根付いており、日本の文化といくつかの共通点を持ちながらも、異なる習慣やタブーも存在します。日本で日常的におこなわれる行為が、ミャンマーでは誤解を招くこともあるため、文化の違いを理解することが重要です。
それでは、さらに詳しくミャンマーの文化と日本の習慣の違いについて見ていきましょう。
ミャンマーに深く根付く仏教徒の歴史
ミャンマーに根付く仏教は、その国の歴史と切り離せない存在です。仏教がミャンマーに伝わったのは、3世紀頃とされており、インドからアショーカ王の時代に伝わったと考えられています。この宗教は、王朝の繁栄とともに広まり、特にパガン朝(11世紀~13世紀)の時代に国教として確立しました。パガン朝時代には、多くの仏教寺院や仏像が建てられ、現在も残る壮大なパガン遺跡群はその影響を色濃く反映しています。
仏教は、ただの信仰に留まらず、ミャンマーの人々の日常生活や社会の仕組みにも強く影響を与えてきました。例えば、僧侶は社会的に非常に尊敬される存在であり、特に教育や道徳的指導の役割を果たしています。ミャンマーでは多くの男性が一時的に出家を経験し、仏教の教えを通じて人生の意味を学ぶという伝統が続いています。
ミャンマーの歴史と仏教は密接に関わっており、文化的価値観や習慣の形成に大きな影響を与えています。
ミャンマーの「ロンジー」と呼ばれる民族衣装
ミャンマーの伝統的な民族衣装である「ロンジー」は、男女問わず日常的に着用される布を使った服装です。ロンジーは一枚の長方形の布でできており、腰に巻きつけて結ぶことでスカートのように着用します。ミャンマーの人々にとってロンジーは衣装以上の存在であり、文化の象徴として、自分らしさを表すものとされています。
ロンジーは、通常は綿や絹などの自然素材の布から作られ、気候に適した快適な着心地が特徴です。男女によってデザインや巻き方が異なり、男性用のロンジーは「パソー」、女性用は「タメイン」と呼ばれます。男性は前で布を結び、女性は横で優雅に布を折りたたむのが一般的です。日常の場面だけでなく、公式な場や祝祭でも着用されるため、柄や色は用途に応じて選ばれます。また、ロンジーを巻く際には、相手に対して足を向けないように気を付けるなど、礼儀に関わる習慣もあります。
このように、ロンジーはミャンマーの文化に根付いた布製の民族衣装であり、日常生活や特別な行事に欠かせないものです。
ミャンマーの日常には挨拶がない
ミャンマーには、日本のような明確な挨拶の習慣はありません。しかし、挨拶に代わる独自のコミュニケーション形式が存在します。日常的な会話では、正式な挨拶というよりも相手の健康や生活に関心を示す質問が挨拶のような役割を果たします。例えば、「ご飯を食べましたか?」(タミンサーピービーラー)や「調子はどうですか?」(ネーカウンラー)といった問いかけが一般的です。これらは、相手を気遣う言葉であり、ミャンマーの人々にとっては親しみを込めた挨拶になります。
また、ミャンマーでは身体的な表現として、軽く頭を下げることで敬意を表すことがあり、年長者や僧侶に対しては深い礼儀が求められます。敬意を込めた態度が形式的な挨拶よりも重要視されるため、相手に対する配慮が挨拶の役割を担っているのです。
さらに、仏教が強く根付いたミャンマーでは、挨拶の代わりに「サドゥー」という言葉を用いることもあります。これは「善行を称える」という意味で、宗教的な場面や感謝の意を表す際に使われます。このように、ミャンマーには独自のコミュニケーションスタイルがあり、形式ばらないが深い敬意を込めた関わり方が一般的です。
ミャンマー人には姓がない
ミャンマーでは、一般的に姓を持たない文化が根付いています。人々は生まれた順番や両親の名前に由来する名前を持つことが多く、フルネームで呼び合うことが基本であり、日本のように姓を使って人を呼び合う習慣は存在しません。そのため、仕事の場でも相手の名前全体や敬称を用いて呼ぶことが一般的です。
例えば、有名なミャンマーの政治家「アウン・サン・スーチー」氏の場合、「スーチー」は彼女のフルネームの一部ですが、彼女に敬意を表す際は「ドー・アウン・サン・スーチー」と呼ばれます。「ドー」は尊敬を表す敬称で、女性に対して使われます。このように、ミャンマーでは名前の一部や敬称を組み合わせて呼び合うことが、ビジネスシーンやフォーマルな場での礼儀として定着しています。
日本のビジネス文化と異なり、ミャンマーでは姓に頼らず、名前や敬称を重視することで、相手に対する敬意や関係性を示しています。このため、スーチー氏のような有名人も、日常生活で使われる敬称が大切にされています。
ミャンマーの食文化では揚げ物が人気
ミャンマーの食文化は非常に多様で、揚げ物は人気があります。しかし、ミャンマー料理はインド、中国、タイなど周辺国の影響を受けながらも、独自の風味やスタイルを持っています。
揚げ物は、家庭でも屋台や食堂でも食べられています。サモサ(インド由来の揚げ餃子)や揚げバナナ、揚げ豆腐など、多くのスナックや軽食が揚げられているため、軽食やおやつとして揚げ物が人気です。しかし、揚げ物だけでなく、茹でたり蒸したりした料理も多く存在します。モヒンガーと呼ばれる魚スープにライスヌードルを入れた料理は、ミャンマーの国民食とも言われ、朝食として広く親しまれています。
そして、ミャンマー人にとって忘れてなならない調味料が「ンガピー」です。塩分と旨味が凝縮されたンガピーは、ご飯との相性が良く、貧しい時代や地域でも、ンガピーと野菜だけで食事を済ますことができるほど、日常生活に密着しています。その独特の香りと味わいは、ミャンマー料理の特徴を形成し、家庭や屋台、レストランで広く使用されています。
このように、ミャンマーの食文化は揚げ物をはじめカレー、スープ、発酵食品、麺料理など、多彩な料理で構成されており、地域や民族によっても異なる味わいを楽しむことができます。
ミャンマー人は誕生日にお礼をする習慣
ミャンマーには独特の誕生日の習慣があり、誕生日を迎えた人がお礼をする文化があります。これは、日本や他の多くの国とは異なる習慣で、誕生日を祝う本人が周囲の人々に感謝を表す特別な日とされています。
誕生日には、家族や友人、僧侶に食事や贈り物をすることが一般的です。この習慣の背景には、ミャンマーの仏教的な考え方が深く関わっています。仏教徒である多くのミャンマー人は、誕生日を迎えることを機に「善行」を積むことを大切にしています。例えば、僧侶や貧しい人々に寄付をしたり、寺院で善行をおこなうことがよくあります。このようにして、誕生日は「他者に感謝し、善を施す日」として祝われます。
誕生日を祝う際、家族や友人を招いて食事を振る舞うことも多いですが、このときも「感謝の気持ち」を示すことが重要です。日本では誕生日の人が祝われるのが一般的ですが、ミャンマーでは誕生日の人が感謝の意味を込めて周囲にお礼をするという独自の風習が根付いています。
ミャンマーの主な交通機関は「バス」と「タクシー」
ミャンマーの主な交通機関は「バス」と「タクシー」です。他にもいくつかの交通手段が広く利用されており、それぞれ使用用途が違います。
|
主に使われる交通機関の説明は以下のとおりです。
バス
バスは、ミャンマー国内で最も広く利用されている交通機関の一つです。 ヤンゴンやマンダレーなどの大都市では、公共バスが市内を網羅する主要な移動手段として機能しています。
中心部を走るバスの他に、都市間を結ぶ長距離バスも非常にポピュラーです。バスは比較的安価で、一般の人にとって手頃な交通手段となっています。ヤンゴンでは、2016年に導入された「ヤンゴン・バス・サービス」(YBS)が
主要な公共交通ネットワークを担っており、定時運行や料金システムの整備をおこなっています。
タクシー
タクシーも都市部では非常に一般的な移動手段です。ヤンゴンやマンダレーなどの都市ではタクシーが豊富にあり、アプリを使って呼ぶこともできます。運賃は交渉制となることが一般的で、エアコンの有無などで運賃が変わることもあります。
また、ミャンマーでは配車アプリの「Grab」が導入され、都市部では便利な移動手段として利用されています。事前に料金が確定するため、外国人旅行者にも使いやすいです。
バイクタクシー
ミャンマーのダーウェーでは、バイクタクシーもよく利用されています。 バイクは自由に移動できるため、便利な選択肢となっています。
鉄道
ミャンマーには国営の鉄道網がありますが、運行状況が不安定で、速度も遅いため、一般的な交通手段はあまり利用されていません。市内の「ヤンゴン環状線」などは地元住民や観光客に利用されています。
トライショーや馬車
地方では、トライショー(三輪自転車タクシー)や馬車なども交通手段として利用されています。 特に、観光地では観光客向けにこれらの交通手段を提供している地域もあり、短距離の移動に便利です。
ミャンマーの雨季は日本より長い
ミャンマーの雨季は、日本と違い、主に5月から10月までと長期間続きます。雨季の影響は地域によって異なり、ヤンゴンやモーラミャインなどの沿岸地域は非常に雨が多く、バガンやマンダレーのような中央部の乾燥地帯では雨が少なく、
比較的乾燥しています。雨季の間、気温は比較的穏やかで、平均的には25〜30℃程度に落ち着きますが、湿度は非常に高くなります。 降雨は主に午後や夜に集中し、朝は晴れることが多く一日中雨が降り続けることは稀です。
しかし、道路のぬかるみや交通渋滞が発生しやすく、特に地方への移動は困難となります。
雨季は農業にとって非常に重要です。 ミャンマーでは米が主食であり、雨季の豊富な水資源を利用して稲作が行われます。 この時期、田園風景は豊かな緑で美しく、かなり観光も自然が最も豊かな時期と言えますが
洪水のリスクが高いため注意が必要です。
雨季の旅行は、交通やアクセスの面で制限がありますが、雨上がりの自然景観や観光地の静けさを楽しむことができるため、雨季の訪問にも魅力があります。
ミャンマーの教育制度
ミャンマーの教育制度は、5年間の初等教育、4年間の中等4年間の中等教育(前期・後期)2年間の高等教育という段階に分かれます。ちなみに日本の場合、6年間の小学校、3年間の中学校、3年間の高校、そして大学という「6-3-3-4制」が基本です。教育の大部分は政府によって管理されていますが、都市部と農村部では教育の質に問題があり、都市部では学校や教材が比較的重視されている反面、地方では教師や施設が不足しており、教育の機会が限られていているのが現状です。
授業は通常、ミャンマー語でおこなわれますが、高等教育に進むと英語も主要な授業言語になります。近年、英語力の向上が進み、国際的な教育へ力を入れています。また、科学や社会科などの科目が重視され、試験制度も厳しく、
成績によっては進学や就職の機会に大きな影響を与えるようになりました。
高等教育については、大学進学を目指す学生は高校卒業後、大学審査試験を受けなくてはなりません。 ミャンマーには公立大学と私立大学がありますが、入学競争は非常に好意的で、一部の学生は海外での進学を希望するケースも増えています。
一見すると、教育の環境は充実してきていますが、教育制度には改革の問題があり、教育の質の向上や地方と都市の不平等の改善が求められています。
ミャンマーで気を付けるべきルール
ミャンマー人と接する際には、その独特な文化や慣習に準拠し、守るべきルールを理解することが大切です。例えば、服装や礼儀、僧侶に対する接し方、そして女性と男性の役割に関する伝統的な考え方など、日本とは異なるルールがあります。
それでは、ミャンマーで注意すべき主なルールやマナーについて詳しくご紹介していきます。
子どもの頭を撫でるのはだめ
ミャンマーでは、子どもの頭を撫でることは避けるべきとされていますが、これは厳密な「ルール」というよりも、文化や宗教的な習慣に基づいたマナーです。仏教の教えに深く影響されているミャンマーでは、頭は最も神聖な部分とされており、無闇に接触するのは厳禁です。この考え方は、子どもに限らず、年齢や性別を問わずミャンマー全体で広く共有されています。ミャンマーでは、個人の観点や身体的な神聖さが強く尊重されており、一方で文化的な背景を理解して行動することが重要です。
一方、日本では、子どもの頭を撫でることが愛情や懸念を示す行動として一般的に受け入れられています。多くの人が無意識に行っているでしょう。しかし、異文化においては同じ行動が推奨を生むこともありますが、コミュニケーションでは相手文化や価値観を尊重することが大切です。
ミャンマー人と交流する際には、相手や文化習慣に配慮し、頭に触れないというマナーを守ることが求められます。 特に、宗教的な背景が強いミャンマーでは、相手に対する配慮が何よりも重んじられるため、随時ルールやマナーを理解して行動することが、スムーズな人間関係を築くカギとなるでしょう。
ミャンマー人は怒り方に注意が必要
ミャンマー人と接する際には、怒り方や感情の表現に注意が必要です。仏教の教えに深く浸透した文化を持つミャンマーでは、平静さや穏やかさを尊重しなければなりません
怒鳴ったり、声を荒げたりするのは控えましょう。また、非難を公の場でおこなうのも厳禁です。
ミャンマーは、面子(メンツ)を重んじる文化でもあり、感情的に怒鳴ったり、非難したりすることは、相手の面子を潰す行為と捉えられます。
相手を傷つけることは、恥をかかせることに繋がるため、ミャンマーの社会では極力避けられるべき行為です。
こういった面に配慮して感情を抑えつつ、冷静で礼儀正しく対処する穏やかな口調で、相手に配慮を持って話しましょう。さらに、間接的に問題を指摘するのが良い対処法です。
人に対して解決を求めるのではなく、一緒に問題を解決することが基本となります。
このような文化的背景を正しく、適切な方法で感情を伝えることで良好な関係に繋がるでしょう。
まとめ
ミャンマーの文化は、仏教を中心に深く根付いており、その影響は日常生活や人々の行動、価値観にまで強く表れています。名前の呼び方や挨拶の仕方、食べ物の好み、子どもへの接し方など、日本とは大きく異なる文化や習慣が多く見られます。
その一例として、子どもの頭を撫でる行為が避けられる理由や、ミャンマー特有の発酵食品「ンガピー」をはじめとした食文化などを挙げていきました。
さまざまな文化の習慣の違いに戸惑うこともあるかもしれませんが、ミャンマーの人々も同様に日本文化に驚くことがあります。そのため、感情的に怒ったり、個人を公然と非難する行為は、ミャンマーでは特に注意が必要です。
信頼関係を築くためには、穏やかで礼儀正しい態度が重要視されます。 ミャンマーの文化や習慣を冷静に相手への配慮を示すことで、より良い人間関係が築けるでしょう。