コラム
【2024年最新版】外国人技能実習生制度が廃止!新創設「育成就労制度」とは?企業への影響について
技能自習制度
2016年より施行された外国人技能実習制度を廃止し、新たに「育成就労制度」が導入される予定です。政府は2023年11月22日に有識者会議をおこない、同年1月30日に最終報告書を法務大臣へ提出しました。
2024年2月9日の政府方針によると育成就労制度は2027年からの開始とされていますが、移行期間が3年間見込まれているため完全に移行するのは2030年頃と考えられています。
この記事では、新たに導入される育成就労制度について詳しく紹介し、企業に与えるメリットやデメリットについても解説します。
目次
技能実習制度とは?
技能実習制度とは、日本で育まれてきた知識や技能を開発途上の地域へ移転することで、該当地域の経済発展を支援する「人づくり」への貢献を目的として1993年に創設された制度です。
2017年11月の「外国人の技能実習の適正な実務及び技能実習生の保護に関する法律(技能実習法)」の施行と共に新たにスタートしました。
出入国在留管理庁の調査では、技能実習生の総数は2222年6月には約33万人にのぼり、その半数以上がベトナム人です。技能実習生が学べるのは、食品製造、機械加工などの91種167作業に及びます。(2024年9月30日現在)
技能実習制度では以下のように在留資格が認められています。
入国年数 | 入国の目的 | 在留資格 | |
企業単独型 | 団体監理型 | ||
1年目 | 技能等の修得 | 技能実習1号イ | 技能実習1号ロ |
2・3年目 | 技能等の習熟 | 技能実習2号イ | 技能実習2号ロ |
4・5年目 | 技能等の熟達 | 技能実習3号イ | 技能実習3号ロ |
在留資格の技能実習には、1号・2号・3号の3種があります。資格の取得は技能実習1号から受け、学科や実技試験を通過すると2号、3号と取得できます。最長在留期間は、5年になります。
技能実習生は労働者ではなく、技能を習得中の実習生です。企業の一員として労働しているものの、企業と雇用関係で結ばれているのではないと考えるのが通常です。
技能実習制度の問題点・廃止の背景
ここまで、技能実習制度の概要について説明してきました。長きに渡って制定されてきた技能実習制度ですが、さまざまな問題点が指摘されています。ここでは、技能実習制度の問題点と廃止の決定に至った背景を解説します。
実習生として技能実習生が扱われない
大きな問題は、技能実習生が実習生として扱われず国内の労働力となってしまっている点です。そもそも技能実習制度の目的は、日本が培ってきた技能を開発途上国へ移転するという社会貢献にあり、現状当初の目的から逸脱しています。
さらに、企業による人権侵害が原因とされる実習生の失踪は、2021年には7,000人にものぼっているのです。
技能実習生は転職(転籍)ができない
技能実習生は、制度として転職(転籍)が認められていません。転職(転籍)ができないことで問題は深刻化しているといえます。なぜなら、企業から人権侵害を受けるなどのトラブルがあっても、他の会社に移ることができないからです。
違法にもあたる低賃金、暴力行為やパワハラ、規定を上回る長時間労働などの技能実習生に対する人権侵害行為が後を絶ちません。
技能実習生がトラブルに巻き込まれた際は、監理団体へ相談することになっていますが、きちんと対応されないケースが増えています。
その結果、追い込まれた実習生は契約期間が終了するまで耐えるか、もしくは失踪するしか方法がなくなってしまうのです。
新制度「育成就労制度」とは?
ここまでは、なぜ技能実習制度が撤廃されることになったのかを解説しました。次に、育成就労制度について詳しくみていきます。
育成就労制度で改善されたポイント
育成就労制度を一言で表現するなら、技能実習制度の問題点を改めて改善したものだといえます。技能実習制度の問題点と改善点は以下の通りです。
【技能実習制度の問題点】
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【育成就労制度の改善点】
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育成就労制度の改善点の②にある「やむを得ないと認められた場合」とは、企業側の提示した労働条件が実際とは異なるような場合です。仮に企業側が一方的に人員整理などで解雇した場合には、その後1~5年間は外国人の受け入れができなくなるなどの罰則が課されることがあります。
育成就労制度の受け入れ対象分野
育成就労制度の受け入れ対象分野は、当面は非専門的分野に位置づけられます。しかし、一定期間の育成を経た後、専門的で技術力が必要である特定技能1号への移行を予定しています。
つまり、育成就労制度は在留資格であり、特定技能1号へ移行するためのステップだということが明らかになりました。ゆえに、育成就労産業分野には特定技能対象分野の一部が指定されると考えられます。
さらに、育成就労産業分野内に「労働者派遣等育成就労産業分野」という分野が作られるともいわれています。この分野には労働者派遣が認められる可能性が高く、農業や漁業が当てはまると想定されています。
監理団体の名称は監理支援機関に変更となる
技能実習制度で実習生や受け入れ企業のサポートを担っている監理団体は、監理支援機関と呼ばれるようになります。
監理団体は、具体的には技能実習生募集の受け入れ手続きや面接などの指導や監査を行ってきましたが、中には劣悪な組織が存在しており問題視されていました。
監理支援機構と名称が変更された後は組織外に監査人を配置し、人権侵害や不法就労といった問題への対応の強化を図ります。
なお、監理団体は「監理支援機関」に変更申請する必要がありますが、詳細はまだ決まっていません。
外国人労働者が育成就労制度を受けるには?
技能実習制度では入国前に日本語能力の審査はありませんでした。しかし育成就労制度では一定の日本語力を身に付けた上で入国する必要があります。
具体的には、入国前の段階で日本語能力A1相当以上の試験に合格(日本語能力試験N5レベルの日本語能力)もしくは、同程度の日本語講習を受講する必要があります。
また、入管法(出入国管理及び難民認定法)においては、技能実習制度に代わって育成就労制度が施行されるため、現行と似通った条件になると考えられています。
企業が育成就労の外国人労働者を受け入れるには?
育成就労制度の施行後に企業が外国人労働者を受け入れるには、国が定めた「特定産業分野」に含まれる業種や職種であることが要件です。その他の要件に関しては、まだ明らかになっていません。
なお、技能実習制度で定められていた「開発途上国への技能移転による国際貢献」に基づいた要件は廃止されますが、技能実習生の日本語能力向上や報酬アップのための要件が加わることになります。
また、現行の特定技能制度で定められている、分野別協議会への加入要件も必要になると考えられます。
技能実習制度から育成就労制度への主な変更点
以下の表は、技能実習制度と育成就労制度の主な変更点をまとめたものです。
項目 | 技能実習制度 | 育成就労制度 |
目的 | 技能移転による国際貢献 | 特定技能1号の人材育成と各産業分野での長期雇用できる人材の獲得 |
業種数 | 職種:91 作業:167 | 分野:12+4 |
在留資格 | 技能実習1号2号3号 | 育成就労 |
在留期間 | 通算最長:5年 | 原則:3年 |
転籍 | 不可(原則) | 可能(条件付) |
受入人数 | 上限なし | 上限あり |
日本語能力 | 入国前審査なし | 入国前にA1レベル(日本語能力試験N5が必要) |
技能実習制度の目的は「開発途上国の外国人労働者への技能移転による国際貢献」で、在留期間は通算で最長5年でした。一方、育成就労制度の目的は「特定技能1号の人材育成と各産業分野での長期雇用可能な人材の獲得」で、在留可能期間は原則として3年です。
また、技能実習制度では「転職(転籍)」が禁止されていましたが、育成就労制度では条件付きで転職(転籍)もできるようになります。
さらに、技能実習制度では受入人数の上限が設けられていませんでしたが、育成就労制度では労働市場の動向を元に上限を設けます。
日本語能力については、技能実習制度では入国前の審査が不要でしたが、育成就労制度になると「入国前にA1レベル(日本語能力試験N5が必要)」などの違いがあります。
育成就労制度のスタート時期と移行期間
ここでは、育成就労制度がいつ始まるのかと、それまでの移行期間について解説します。
育成就労制度が正式にスタートするのは、2027年の予定です。その後2030年までの3年間は、新旧の両制度が共存しながら徐々に新制度へと移っていきます。
以下は、2024年から2030年までのスケジュールをまとめたものです。(スケジュールは2024年10月現在のものなので、今後変更の可能性があります)
2024年 | 育成就労制度の基本方針と主務省令などを製作 |
育成就労制度についての主務省令発表と申請開始日の発表 | |
2025年 | 監理支援機関の許可などの事前申請をスタート |
分野別の運用方針を策定し、育成就労産業分野を設ける | |
2026年 | 送出国とMOC(協力覚書)の交渉と製作・署名を行う |
2027年 | 育成就労制度の施行、特定技能制度との共存期間をスタート |
2030年 | 技能実習制度が完全に廃止され育成就労制度への完全移行を行う |
2025年内に分野別の運用方針が作成され、新制度の条件等について詳しく決まる予定です。
この時期に、外国人労働者や企業はより詳細な準備が可能です。
企業にとっての育成就労制度のメリット
育成就労制度に変わることで企業にはどんなメリットがあるのか、主なメリットは以下の3つです。
① 長期的に外国人を雇用できる
育成就労制度に変わると、企業は長期的に外国人を採用することができます。技能実習制度と特定技能では従事可能な職種が異なるため、在留資格を移行する際に同一の外国人を採用できなくなる場合がありました。
育成就労制度には特定技能対象分野の一部が指定される予定なので、企業は同じ外国人を長期的に採用できます。労働力不足に苦しむ日本の企業にとって、技能を習得した人材の雇用が進むのは非常に喜ばしいことです。
さらに、在留外国人にとっても同じ職場に居続けられるので、生活の安定とスキルアップにつながります。
② 一定レベルの日本語力がある外国人を雇用できる
育成就労制度に代わると、入国前にA1レベル(日本語能力試験N5が必要)の日本語力がある外国人の雇用ができます。
技能実習制度では入国前の日本語力が審査されなかったため、実習時に意思の疎通が困難になる場合がありました。
育成就労制度では一定レベルの日本語能力が要件に追加されたので、意思疎通に問題が生じる可能性は減少するでしょう。
言葉の壁が完全になくなるわけではありませんが、意思の疎通がうまくいかないと仕事を覚えるのが遅くなり、職場全体にストレスがかかります。
一定レベルの日本語力を持った外国人なら、スムーズに実習を進めることができるはずです
③ グローバル化による企業の活性化と成長が期待できる
グローバル化は新しい見解や発想を生み出し、企業の活性化と成長が期待できます。育成就労制度によって企業は雇用の多様化が進み、異なる文化やポリシーを持つ従業員の確保がしやすくなります。
また、外国人労働者の祖国との新規ビジネスが生まれる可能性もあります。
外国人労働者の積極的な雇用は企業の生産性をアップし、技術力の向上や国際市場におけるシェアの拡大につながります。
育成就労制度による企業への影響と対策
前章では、企業にとっての育成就労制度のメリットをお伝えしました。しかし、育成就労制度はメリットばかりではありません。
この章では育成就労制度が企業に及ぼす影響とその対策を紹介します。
育成就労制度による企業への影響
技能実習制度の本来の目的とその実態の隔たりは大きな社会問題となっていますが、育成就労制度の施行によって改善されることが期待されています。
しかしながら、人材不足を技能実習生の労働力で補っている企業にはさまざまな影響があります。技能実習生の受け入れのために企業は以下のような支援を行っています。
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技能実習生の受け入れは、企業にとって人材確保の期待が持てる一方で多大な費用と手間がかかります。
現行の技能実習制度では外国人実習生の転職(転籍)が原則として禁じられているため、実習生は高い定着率を保っています。ところが、育成就労制度が施行されると転職(転籍)ができるようになります。
高額の費用と手間をかけた技能実習生が、給与水準の高い都市部や高収入が見込める業種へと転職(転籍)する可能性もあるということです。
企業としては外国人労働者の受け入れを行っても労働力の強化が図れなくなるため、今後外国人労働者の受け入れそのものが減少するかもしれません。
外国人材流出の可能性がある企業の対策
技能実習制度が廃止されると、企業は費用と手間をかけて育てた外国人材が流出して人手不足になる可能性があります。
ただでさえ日本は人手不足が深刻化している社会です。中小企業では「人手不足倒産」が増加していることからも、労働力の不足が企業経営に与える影響の大きさがうかがえます。
以上のような最悪の事態を回避するためにも、人材不足解消の対策を検討することが重要です。
人材不足解消の対策として以下の2つを紹介します。
人材派遣会社を利用する
多種多様な派遣社員が登録される人材派遣会社の利用は、人手不足の解消に有効です。人材派遣会社なら同じ業種のスキルを持つ派遣社員を獲得できるケースもあります。
また、派遣会社には紹介予定派遣と呼ばれるシステムがあります。紹介予定派遣とは、直接雇用を見据えて一定期間派遣された後に双方の合意によって直接雇用されるシステムです。
紹介予定派遣を利用すれば、採用が失敗に終わる可能性が少ないというメリットがあります。
繁忙期だけ人手が必要というケースでは一般派遣を利用し、長期間の人材が欲しい場合は紹介予定派遣や常用派遣を依頼するのがおすすめです。
人材派遣会社を利用することで社員教育や技術習得にかかる時間やコストを大幅に削減できます。また、求人や面接、さらに入社手続きや労務管理といった雇用に関する一連の流れは、全て派遣会社によって行われます。
コストや手間を削減しつつ人手不足を解消するには、人材派遣会社の利用が効果的です。
外国人インターンシップ制度を導入する
人手不足対策としては、外国人インターンシップ制度を導入するという方法もあります。外国人インターンシップを導入することで、有望な外国人労働者や留学生を企業に招き入れることができるからです。
外国人インターンシップ制度とは、留学中の外国人大学生が直接企業に研修へ出向き、詳しい仕事内容や会社のシステム、企業内の人間関係などを実践から学ぶものです。
外国人インターンシップの導入によって人手不足が解消され、さらに、異文化との交流は企業のイノベーションを促進してグローバル化が進むというメリットもあります。
とはいえ、企業が独自で外国人インターンシップ制度を導入するのは困難だといえます。海外の大学に申請したり数々の書類を準備してサポート体制を整える必要があるからです。
導入が困難な場合は、外国人インターンシップ制度の取扱いがある人材紹介会社に依頼するという方法があります。数々の実績を持つ人材紹介会社なら、海外インターンシップ制度を効率良く導入することが可能です。
人材紹介会社を通して外国人インターンシップ制度を導入することも、人手不足の解消に大変有効な手段だといえるでしょう。
育成就労制度受入れ準備のポイント
育成就労制度が施行された時のために、受け入れ準備を行うポイントを紹介します。
日本人従業員に外国人受入れのための研修を行う
外国人を受け入れて一緒に働くには、日本人従業員に研修を行う必要があります。国によって文化や習慣が異なるのはもちろんですが、働き方のスタイルや就業規則も違うからです。
予め育成就労外国人の国々の働き方を学んでおくことで理解が深まり、実際に仕事を進める際のトラブルが減少します。
採用コストのための資金計画を立てる
育成就労制度で必要となるコストを想定し、資金計画を立てることも必要です。新制度では外国人労働者の渡航費や日本語講習の費用、技能研修費など、必要経費が増加するからです。
掛かる費用を的確に見積もり、しっかりと資金計画を立てましょう。以下に、資金を抑えるコツを紹介します。
① 採用は少人数からスタート
最初から大勢採用すると、初期費用が大きく掛かります。少ない人数で状況を判断しつつ、採用計画を立てましょう。
② 国の支援制度を利用
資金計画の一環として国の支援制度の利用も検討できます。さまざまな補助金や助成金制度が設けられているので、積極的に利用することでコストの削減が可能になります。
③ 地域で連携して情報収集
自社だけではコスト削減に関する情報収集も限界がありますが、地域の企業団体や商工会議所などと連携することで、さまざまな手段を検討できます。
たとえば、技能習得講習に教室が必要な場合にも、何社かが共同で借りればコストが削減できます。
また、外国人向けの住まい探しでも、情報を共有すればそれぞれの企業の負担を抑えられます。
外国人が働きやすい職場環境を整える
外国人労働者にとって魅力的で働きやすい労働環境を提供することも大切です。
そのためには、たとえば「社内の標識や案内板を多言語対応にする」「英語の苦手な従業員は翻訳アプリを使用」「宗教上の制限を配慮した食事」などが必要になるでしょう。
また、日本語習得支援や住宅サービスといった外国人労働者に必要な福利厚生も充実させる必要があります。
日本人従業員と外国人労働者が共にゲームや食事で楽しめるような企画を催すのも、相互理解を深めて良い職場環境を作るために効果的です。
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まとめ
この記事では、2027年のスタートが予定されている「育成就労制度」の内容と企業への影響について詳しく解説しました。現行の技能実習制度には多くの問題があり、数々の議論が交わされた結果2027年~2030年の移行期間を経た後は完全撤廃される予定です。
育成就労制度の開始は外国人労働者にとってはメリットが大きいものですが、受け入れを行う企業には乗り越えるべき課題がいくつか存在します。
それらの課題を乗り越えて外国人労働者と共に協力し合える社会を築くことで、日本の未来が開けるのは間違いありません。
現在の人材不足を解消して外国人労働者と日本企業がWin-Winの関係を築ける社会が理想です。
育成就労制度が開設されるこの機会に、御社でも外国人労働者の導入をぜひ検討してみてはいかがでしょうか。