コラム
外国人労働者の課題とは?原因と対策、受け入れのメリット・デメリットを紹介
その他
少子高齢化や人口減少が進む日本では、労働力不足が深刻な問題となっており、外国人労働者の雇用受け入れに注目が集まっています。この記事では、言語の壁や文化の違い、定着率の低さといった課題を解決するために企業がどのような対策を講じるべきか、また受け入れのメリットデメリットを詳しく解説します。
現場で役立つ実践的な情報についても確認していきましょう。
外国人労働者の課題
日本では、技能実習制度や特定技能制度を通じ、多くの外国人が日本で働く機会を得ていますが、言語の壁、労働環境、文化の違いなどさまざまな課題も浮き彫りになっています。
さらに、企業側にも適切な受け入れ体制の整備が求められていて、外国人労働者が安心して働き、定着できる環境づくりが急務となっています。
それでは、外国人労働者の現状と直面する課題、雇用側の対応を詳しくみていきます。
①言葉の問題
外国人労働者が直面する課題の一つ目が、言語の壁です。日本語が堪能でない外国人労働者は、日常的な業務の遂行や職場でのコミュニケーションに困難を感じることが多く、安全面や効率的な作業の観点で問題が生じます。言葉の違いから誤解やミスが生じると、業務の生産性が低下するだけでなく、事故の原因の恐れもあります。企業側が日本語教育を積極的にサポートすることは、業務の効率を高めるだけでなく、労働者の安心感と労働環境の向上にもつながります。
②労働環境や待遇の問題
外国人労働者が直面する課題の二つ目が、労働環境や待遇です。低賃金や過重労働、不十分な福利厚生などが報告されています。これらの問題は、外国人労働者が働く意欲や労働条件への不満を引き起こし、労働者の定着率を下げる原因となります。日本で働く外国人労働者の多くは、現場での業務が多く、なかには常務内容が過酷であることも少なくありません。また、言葉の壁や文化の違いから、労働条件に対する意見を言いにくい状況にあるため、企業が積極的に労働者の声に耳を傾け、改善策を講じることが重要です。
③文化の違いや日本の生活での問題
外国人労働者が直面する課題の三つ目が、文化の違いや日本での生活です。たとえば、。日本では、社会的な規範やマナーが厳格であるため、これに適応することが求められます。しかし、外国人労働者が暮らしていた国の食文化や生活習慣、価値観の違いが日常生活においてストレスの原因となります。最初は、戸惑い、適応に時間がかかる人がほとんどです。また、外国人労働者の多くは、日本に来てから一人暮らしを始めるため、生活に必要な情報や支援が不足しやすく、生活面での困難も感じやすいです。こうした問題を解消するために企業側は、生活面でのサポートを合わせてしていくことが課題となります。
現在の外国人労働者の状況とは?最新データを解説
内閣府によると日本における外国人労働者の数は、2023年10月末時点で約205万人に達し、過去最高を更新しました。 これは全雇用者の約3.4%を占め、労働市場における外国人労働者の重要性が増しています。
それでは、日本における外国人労働者数の推移や業種別の外国人労働者数などについて詳しくみていきます。
外国人労働者数の推移
厚生労働省の調査によると、2007年に外国人雇用届出制度が導入されて以来、外国人労働者数は増加傾向にあります。
・2,048,675人(前年比 +225,950人)
・対前年増加率 12.4%(前年 5.5% から6.9ポイント上昇)
・届出義務化以降、過去最高を記録
産業別の外国人労働者数
外国人労働者は多様な業種で活躍しています。人手不足が深刻な業界では、外国人労働者の受け入れが年々増加しており、労働市場に欠かせない存在となっています。製造業や医療・福祉業、宿泊・飲食サービス業などでは、多くの外国人が働き、企業の生産性向上やサービスの維持に貢献しています。それぞれの業種でどのように外国人労働者が増加しているのか、具体的なデータは次のとおりです。
(引用元:厚生労働省ホームページ)
・2016年:33.9万人
・2023年:55.2万人(1.62倍)
→外国人労働者の増加が顕著な業種の一つです。特に、食品加工・自動車・電子機器関連の分野で慢性的な人手不足を補うため、外国人労働者の受け入れが進みました。
【医療・福祉業】
・2016年:1.7万人
・2023年:9.1万人(約5.4倍)
→介護人材の確保が急務となり、技能実習生や特定技能制度を通じた雇用が増加しています。
【宿泊・飲食サービス業】
・2016年:13.1万人
・2023年:23.4万人(約1.8倍)
→日本の観光業の回復に伴い、ホテル・飲食店での人手不足を補うために外国人労働者の雇用が進みました。接客業務では外国語対応が求められるため、ベトナム・中国・フィリピン出身の労働者が多く活躍しています。
このように、外国人労働者は製造業や介護業界、宿泊・飲食サービス業を中心に増加しており、日本の人手不足を補う重要な存在です。今後も各業界での受け入れが進むと考えられますが、同時に労働環境の改善や定着支援の強化が求められています。
国別の外国人労働者数
国別に見るとベトナムが最も多く、全体の25.3%を占める518,364人となっています。次いで、中国が19.4%(約397,000人)、フィリピンが11.1%(約227,000人)と多くなっています。その他にも、ネパール(約11万人)、インドネシア(約9万人)、ミャンマー(約6万人)など、東南アジア諸国からの労働者が多くを占めており、近年ではウクライナ避難民や南米日系人など、特定の事情を抱える外国人労働者の受け入れも進んでいます。外国人労働者の国籍別の傾向は、日本の経済状況や入国管理政策の変更に応じて変化しており、今後も特定の国・地域からの労働者の増加が見込まれるでしょう。
外国人労働者を受け入れるメリット・デメリット
(引用元:photoAC)
外国人労働者の課題や現状について説明してきましたが、外国人労働者を受け入れるメリットとデメリットは、それぞれ以下のとおりです。
メリット | デメリット |
①労働力不足の解消 ②多様な価値観や文化の導入 ③特定分野の専門人材の確保 |
①労働条件や待遇 ②定着率の低さ ③社会的な受け入れ体制 |
詳しく説明していきます。
外国人労働者を受け入れる3つのメリット
外国人労働者の受け入れは、企業や社会にとって多くの利点があります。3つのメリットを詳しく説明します。
<h4>①労働力不足の解消
1つ目のメリットは、外国人労働者を受け入れることで、人手不足の業界での労働力を確保し、経済の活性化につなげることです。日本では少子高齢化の影響で、特に建設業、介護業、製造業、飲食業などの分野で深刻な人手不足が続き、技能実習制度や特定技能制度を利用すれば、一定の技術を持つ外国人労働者を採用することができます。
②多様な価値観や文化の導入
2つ目のメリットは、外国人労働者を受け入れることで、企業内に多様な文化や価値観がもたらされ、新しいアイデアや柔軟な発想が生まれやすくなります。さらに、国際的な事業展開を考えている企業にとっては、外国人労働者の知識やネットワークが有益となるでしょう。
③特定分野の専門人材の確保
3つ目のメリットは、外国人労働者のなかにいるIT技術者やエンジニア、研究職など高度な専門知識を持つ専門人材の確保を積極的に進めることができます。近年、日本企業はグローバル市場で競争力を強化しているため、特定技能や高度専門職ビザを活用することで、優秀な外国人を雇用するチャンスが広げられるでしょう。
外国人労働者を受け入れる3つのデメリット
外国人労働者の受け入れには多くのメリットがある一方で、企業や社会にとって解決すべき課題もあります。特に、労働条件・定着率・社会的受け入れ体制の3つの側面で注意が必要です。
①労働条件や待遇
1つ目のデメリットは、外国人労働者のなかには、労働条件や待遇に関する十分な知識を持たない人も多く、不当な労働環境に置かれる恐れがあることです。主に、長時間労働や低賃金、不十分な住環境などの問題が指摘されています。企業は外国人労働者が適正な労働条件のもとで働けるようにするため、労働基準法の遵守や適切な管理をおこなうことが必須です。
②定着率の低さ
2つ目のデメリットは、日本で一定期間働いた後に母国へ帰国したり、より条件の良い職場への転職など、早期離職することです。技能実習生の場合、最長5年の滞在後に帰国することが一般的となっています。しかし、企業にとっては長期的な人材確保が難しく、再び新しい外国人労働者を採用する手間やコストがかかる結果となりがちです。
③社会的な受け入れ体制
3つ目のデメリットは、外国人労働者が増加により、地域社会において言語や文化の違いによる摩擦が生じることです。特に、外国人向けの住居の確保や医療・福祉サービスの利用に関する問題は頻繁に発生することも予測しなければなりません。また、日本人住民との共生を促進するための取り組みが不十分な場合、地域社会とのトラブルにつながることもあるため、雇用する側が生活面においてもサポートすることが必須です。
外国人労働者の受け入れ6つの対策
外国人労働者を受け入れるメリットデメリットについて説明しました。では、単に労働力を確保するだけではなく、彼らが安心して働ける環境を整えるには、具体的にどういった対策が必要になるでしょうか。
外国人労働者の受け入れの際に、企業や社会が取るべき対策を詳しくみていきます。
①就労前の準備と情報提供
1つ目の対策は、外国人労働者が職場にスムーズに適応するため、雇用する側が事前に必要な情報を提供することです。適切な情報提供を怠ると、労働条件や職場文化の理解不足により、入社後にミスマッチが発生する可能性が高まります。労働契約の内容や日本の就業規則に関する誤解が生じると、早期離職のリスクが高まるため注意が必要です。
外国人向けの雇用契約書や職務マニュアルを作成し、母国語で提供することで、誤解を減らしスムーズな就労につなげることができます。また、オンライン研修やオリエンテーションを実施し、日本の職場でのルールやマナーを事前に学ぶ機会を設けることも有効な対策です。
②外国人労働者向けの相談窓口の設置
2つ目の対策は、外国人労働者が安心して働くため、職場内に相談窓口を設置し、仕事や生活面での不安を解消する環境を整えることです。言語の壁や文化の違いにより、外国人労働者は労働条件に関する疑問や生活面での悩みを抱えることが多く、こうした不安が解消されないままでは、モチベーションの低下や早期離職につながる恐れがあります。
相談窓口の設置は、労働条件に関する疑問や、住居・医療・銀行手続きなどの生活面の悩みを解決する支援をおこなうことが可能です。専門の担当者を配置したり、社外の支援機関と連携したりすることで、より充実したサポート体制の構築を可能とします。
③日本人従業員との関係構築
3つ目の対策は、職場内での円滑なコミュニケーションを実現するためには、日本人従業員との関係構築です。外国人労働者が職場で孤立すると、業務上の意思疎通が困難になり、職場全体の生産性にも影響を及ぼす可能性があります。そのため、異文化理解を促進する環境を整えることがポイントとなります。
定期的に交流会や研修を実施し、日本人従業員と外国人労働者が相互理解を深める機会を設けることで、コミュニケーションの活性化が期待できます。また、日本人従業員向けに「外国人労働者と協力して働くための研修」を実施することで、文化の違いに対する理解を深めることが重要です。
④キャリアパスの明確化
4つ目の対策は、外国人労働者が安心して長期的に働くためには、企業がキャリアパスを明確にし、成長の機会を提供することです。明確な昇進・昇給制度やスキルアップの支援体制を整えることで、外国人労働者のモチベーション向上につながり、企業にとっても優秀な人材の定着が期待できます。
一定の日本語能力試験や技能試験に合格した場合に昇給する制度を設けることで働く意欲を高めることが可能です。また、特定技能制度を活用し、技能実習生が特定技能1号・2号へ移行できるようサポートするのも良いでしょう。こういった取り組みが、熟練した人材を長期間確保できるだけでなく、外国人労働者自身も安定した雇用を得ることができます。
⑤医療・福祉サービスへのアクセス改善
5つ目の対策は、医療機関の利用方法や健康保険制度についての説明をおこなうことです。日本での住環境の確保と生活支援は最優先課題ですが、医療制度は外国人にとって分かりにくい部分が多いです。企業が外国人労働者向けに健康診断を実施したり、多言語対応の医療機関を紹介したりすることで、安心して医療を受けられる環境を整えられます。くわえて、メンタルヘルスケアの支援も必要です。言語や文化の違いによるストレスを抱える外国人労働者は少なくありません。カウンセリングサービスを提供したり、メンタルヘルスに関するセミナーを実施したりすることで、心理的な負担を軽減できます。
⑥労働環境の監視と適正な雇用の確保
6つ目の対策は、外国人労働者の不適切な労働環境を防ぐため、企業と行政が協力して労働状況の監視をおこなうことです。自治体やハローワーク、外国人技能実習機構と連携し、定期的な雇用状況のチェックを実施することで、不正な労働環境を防止できます。
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まとめ
外国人労働者の受け入れは、日本の深刻な人手不足を補うだけでなく、多様な価値観を取り入れる機会にもなりますが、言語や文化の違い、労働環境の整備、定着率の向上など、解決すべき課題も山積しているのが現状です。そのため、企業は事前の情報提供や相談窓口の設置、キャリアパスの明確化など、外国人労働者が安心して働ける環境を整えなければなりません。また、住環境や医療アクセスの改善、自治体との連携強化も必須です。企業や社会ができる対策を講じることで、外国人労働者が長期的に活躍できる環境が整い、日本社会全体の発展にもつながるでしょう。